Untitled Document

 タイ経済の規模を名目GDPを用いて日本と比較してみると、約3%弱に相当する(2000年データ)。人口は日本の約半分のため、一人あたりのGDPは、日本の約6%の水準となる。

日本 4 兆 7,600 億ドル 100 %
タイ 1,220 億ドル 3 %

 経済規模は、1960年にはわずか 589 億バーツ(28億ドル)だったのが、1970年には 1,483 億バーツ(71億ドル)、1980年には 6,625 億バーツ(324億ドル)と4倍以上に拡大し、1990年には 2兆 1,835 億バーツ(853億ドル)となった。アジア通貨危機直前の 1996年には、4兆 5,983 億バーツ(1,814億ドル)となった。さらに、2001年には 5兆 1,001 億バーツ(1,141億ドル)と、5兆バーツを上回った。なお、この年は通貨危機以降のバーツ減価のため、米ドル換算では縮小している。

 現在の経済規模は、1996年当時に近い規模にあるが、アジア通貨危機以降、構造面の特徴は大きく変化しているといってよい。通貨危機以前は、高い貯蓄率とそれを上回る投資率、そして高い投資率を反映した経常収支赤字が目立った特長であった。一方、通貨危機以降では、貯蓄率は依然として高い水準にあるが、投資率は 10%以上も落ち込み、結果として貯蓄・投資のバランスは貯蓄が過剰となっている。

 しかし、経常収支は、通貨危機直後の内需の落ち込みが原因の輸入の落ち込みにより、黒字と転じた。貿易黒字は輸入が回復を見せるに従って、年々縮小の傾向にある。だが、タイへの観光収入や、海外のタイ人からの送金などによる貿易外収支は拡大しているため、この2~3年の期間は経常収支黒字を維持できるのではないかと見られている。

 貿易輸入額と輸出額のGDP比を見てみると、通貨危機前は約 85%だったのが、1998年には 100%を超え、2001年には 125.4%となっている。これは、タイが主な輸出先としているアメリカや日本の景気の影響を強く受けることを示している。通貨危機後に急速に比率が上昇したのは、2000年までの経済回復が輸出主導で進んだのが主な要因であるが、2002年に入ってから内需が拡大してきているため、このままの推移でいくかはまだわからない。

 産業別構造の推移を見てみると、1980年代以降のタイ経済は、伝統的な農業中心の産業構造から、工業やサービス業を中心とする構造に変化を遂げた。農業が占める割合は、1980年には 23.2%だったのが、2001年には 8.6%と3分の1にまで下降している。一方、製造業では、1980年に 21.5%だったのが、2001年には 33.5%となった。工業化が進んだことで、直接投資の流入、輸出の増大が大きく影響している。また、1990年代前半から半ばにかけては、高速道路、高架鉄道の大型プロジェクトの増加に加え、不動産価格が高騰したため建設業のシェアが高まったが、通貨危機以降は急激な減少を見せ、2001年には 2.9%と過去 40年で見ても一番低い水準になっている。

 農業シェアの低下と製造業シェアの上昇の傾向は、輸出品におけるシェアにおいても顕著である。農産物の輸出品に占めるシェアは、1980年においては半数以上の 51.1%だったのに対し、2001年には 7.3%へと急激な低下を見せている。一方、1980年に 21.5%だった製造業は、2001年には 84.9%と大幅に上昇した。1980年には繊維製品や IC といった品目に限られていた輸出上位品目も、1997年にはコンピューター、コンピューター部品、衣類、履物、IC、プラスティック製品等、時代の流れに沿った品目が加わり多様化したといえる。

参考
  • タイ国経済概況 2002/2003 年版(バンコク日本人商工会議所)
Powered by Fact-link.
http://www.fact-link.com