NESDBの最新経済予測 今年の経済成長率は1・5~2・5%増
国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局は五月一九日に公表した『エコノミック・アウトルック』最新号で、二〇一四年の経済成長率を1・5~2・5%増と予測した。今年二月時点の予測3・0~4・0%増から下方修正した。同日発表になった一四年第1四半期の経済成長率は0・6%減に収縮しているため、一四年の成長率は一三年の2・9%増を下回るものと見ている。(22面に関連記事)
NESDB事務局は今回の予測にあたって、一四年の世界経済の成長率が一三年の3・0%増を上回る3・4%増へと回復することを前提にしているが、二月時点の予測の3・6%増からは下方修正した。ただしドバイ原油価格の通年平均は1バレルあたり102・5~107・5ドルと、前回予測時と同じ水準を見積もっている。バーツの対ドル・レートは1ドル=32・0~33・0ドルとし、前回予測時と同じ見積もりとした。
NESDB事務局が同日に発表したGDP統計によれば、一四年第1四半期(一~三月期)にタイ経済の成長率は0・6%減となり、前の四半期の0・6%増からマイナス成長に転じている。季節調整済みの前四半期比では2・1%減となった。家計消費支出が3・0%減となり、総固定資本形成(投資)は9・8%減、輸出額は0・8%収縮した。一般インフレ率は2・0%増、経常収支は267億ドルの黒字で、GDPの8・8%に相当している。
一四年の経済成長率を下方修正した理由として、NESDB事務局は第1四半期の経済が0・6%減のマイナス成長となったことを第一に挙げている。これにより通年で3・0~4・0%増の成長率になるチャンスは低下した。世界経済と世界貿易量も前回の見積もりではそれぞれ3・6%増と4・4%増を見込んでいたが、今回の見積もりでは3・4%増と4・2%増に下方修正した。外国人観光客数は前回見積もりで2750万人を見込んでいたが、2700万人程度にとどまりそう。また一四年度予算の執行率も前回見積もりの92・4%の達成は困難で、せいぜい90・4%程度にとどまる。第1四半期の執行率は19・1%で、目標の24・0%を大きく下回っている。
NESDB事務局は世界市場での輸出商品価格相場が軟化し続けていることをリスク材料に挙げている。農産物輸出の収入の伸びに制約となるためで、特にコメとゴムの輸出価格は今年第1四半期にそれぞれ27・0%、24・3%下落している。主要生産国での生産増と在庫が高水準にあることが理由となっている。また主要輸入国である中国とアジア域内経済は依然として減速している。主要工業製品の輸出価格の回復も遅れているため、タイの輸出価格指数は第1四半期に1・6%下落しており、通年でも弱基調が続くものと見られている。
新政権の発足が予測以上に遅れていることは、政府支出による景気下支えに対する大きな制約となっている。二〇一四年度予算の執行率は従来予測よりも低下しそうで、また二〇一五年度予算の編成作業も遅れる。このほかに二〇一四年の政府収入は編成時目標を下回りそうで、二〇一五年度歳出予算総額にも影響を及ぼす。一五予算年度の最初の四半期となる一〇~一二月期の政府支出は、予算法の制定遅れから多くを望むことができない状況にある。
政治混乱の長期化と景気全般の減速が続いていることは、家計消費支出の回復に対する制約になる。消費者信頼感指数は三月に58・7ポイントと、12年ぶりの最低水準まで落ち込んでいる。政治情勢は依然として高い不確実性の中にあり、消費者の信頼感と消費支出の回復は従来の予測以上に遅れそう。また一三年上半期は自動車販売台数が高水準に達していたため、耐久材の消費支出の伸びは下押しされる。乗用車の販売台数は第1四半期に58・2%減となっており、第2四半期も40~50%減が見込まれている。農産物価格はコメ、ゴム、メイズなどで前年を下回る水準にあり、農業所得の増加に対する制約となる。また金融機関は、第1四半期の経済のマイナス成長と通年見通しの悪化を受け、貸付の審査を一段と厳格にしそうで、消費支出にマイナスになる。
民間投資も、第1四半期に設備稼働率が61・8%まで低下していること、二〇一三年下半期から今年第1四半期にかけての投資奨励の申請額と認可額が減少していることが制約になる。投資家は新投資奨励政策が明確化するのを待っている。投資委員会は四月二二日に新委員が任命されたものの、年の残り期間に投資認可を受けるプロジェクトは、その後の法規に沿った各種の手続きを経る必要があり、年内に工場などの建設で経済システムに注入される資金には限りがある。さらに政治的不確実性と景気の減速は企業の業況判断を曇らせており、三月の業況判断指数は49・4ポイントと、9か月連続で中間値を下回っており、信頼感が回復する兆しも見られない。
二〇一四年の外国人観光客数は従来の予測を下回る見通しが強まっている。国内政治の不確実性と中国の安売りツアー規制の影響が予想以上に大きいためで、第1四半期の外国人観光客数は660万人、前年同期比で5・8%減となった。上半期の外国人観光客数は前年同期を下回る可能性が高い。
こうしたリスクを抱えながらも、通年のタイ経済がプラス成長を維持する見通しにあるのは、世界経済と世界貿易量の回復が見込まれていることが大きい。世界経済の回復は下半期に一段と鮮明になり、広範なものになると期待されている。世界経済が上向くことで輸出が回復することはタイ経済の成長の支援要因になる。主要工業製品では、自動車、電化製品などの輸出は増加に転じている。また主力市場の米国、欧州、日本向けの輸出は増加している。下半期に世界経済の回復がより顕著になり、広範な国・地域に広がることでタイの物品輸出も顕著に上向くものと期待されている。このほかにも石油価格やインフレ率が低い水準にとどまっていることは、金融政策に好都合で、金融当局は緩和を継続するものと期待される。
一四年に消費支出の伸びは全体で1・0%増となり、一三年の1・0%増から横ばいとなるが、前回予測の1・6%増を下回る見通し。民間消費の成長率は1・4%増から0・8%増に下方修正した。自動車に対する消費支出が収縮している上、第1四半期の支出が予想以上に減少したこと、さらには政治的不確実性から消費者の信頼感の回復が遅れることが下方修正の理由となっている。政府消費支出も前回予測の2・0%増を下回る1・8%増にとどまる見通し。経常的経費の執行率の設定値を96・6%から94・4%に下方修正したことが理由。
投資は1・3%減が見込まれ、前年の1・9%減に引き続き収縮する。前回見積もりは3・1%増だった。大幅な下方修正は、民間投資が景気の減速、設備稼働率の低下と投資奨励認可の遅れなどから従来見積もりの3・8%増から0・2%減に転じることと、政府投資が0・3%増から5・0%減に転じることが理由。一四年度の投資的経費の執行率の設定値は72・0%から70・8%に下方修正した。
一四年の米ドル建ての物品輸出額は3・7%増が見込まれている。一三年の0・2%減から上向くことになるが、前回予測の5・0~7・0%増からは下方修正した。輸出価格の設定値を前回見積もりの1・9~2・9%増から1・0~0・0%減に下方修正したことに加え、世界経済と世界貿易量の設定値も下方修正したことが理由。このため物品輸出数量の伸び率は前回見積もりの4・0~6・0%増に対し、4・2%増になる。また外国人観光客数の設定値も下方修正したことで、物品・サービス輸出数量の伸びは3・6%増と、二月時点の予測の6・0%増を下回ることになる。
米ドル建ての物品輸入額は0・5%増と予測され、一三年の0・4%減から上向くが、前回予測の5・7%増を下回る。輸入価格の設定値を前回予測時の0・5~1・5%増から1・0~0・0%減に修正したことに加え、金地金の輸入額の減少から第1四半期の輸入額が予想以上に収縮したこと、輸出、消費と投資の成長率の下方修正にともない、輸入需要も前回見積もりを下回ることが理由となっている。サービス輸入の予測の修正と合わせて、物品・サービス輸入数量の伸び率は1・3%増と、前回予測の4・6%増を下回る。
一四年の経常収支は19億ドルの黒字で、一三年の28億ドルの赤字から上向く。前回予測は6億ドルの赤字を見込んでいた。輸入額の減少幅が輸出額のそれを上回る結果、貿易収支の黒字が前回見積もりよりも増加することが理由。
一四年のインフレ率は1・9~2・9%増と予測した。
日付 : 2014年05月26日
By : 週刊タイ経済
NESDB事務局は今回の予測にあたって、一四年の世界経済の成長率が一三年の3・0%増を上回る3・4%増へと回復することを前提にしているが、二月時点の予測の3・6%増からは下方修正した。ただしドバイ原油価格の通年平均は1バレルあたり102・5~107・5ドルと、前回予測時と同じ水準を見積もっている。バーツの対ドル・レートは1ドル=32・0~33・0ドルとし、前回予測時と同じ見積もりとした。
NESDB事務局が同日に発表したGDP統計によれば、一四年第1四半期(一~三月期)にタイ経済の成長率は0・6%減となり、前の四半期の0・6%増からマイナス成長に転じている。季節調整済みの前四半期比では2・1%減となった。家計消費支出が3・0%減となり、総固定資本形成(投資)は9・8%減、輸出額は0・8%収縮した。一般インフレ率は2・0%増、経常収支は267億ドルの黒字で、GDPの8・8%に相当している。
一四年の経済成長率を下方修正した理由として、NESDB事務局は第1四半期の経済が0・6%減のマイナス成長となったことを第一に挙げている。これにより通年で3・0~4・0%増の成長率になるチャンスは低下した。世界経済と世界貿易量も前回の見積もりではそれぞれ3・6%増と4・4%増を見込んでいたが、今回の見積もりでは3・4%増と4・2%増に下方修正した。外国人観光客数は前回見積もりで2750万人を見込んでいたが、2700万人程度にとどまりそう。また一四年度予算の執行率も前回見積もりの92・4%の達成は困難で、せいぜい90・4%程度にとどまる。第1四半期の執行率は19・1%で、目標の24・0%を大きく下回っている。
NESDB事務局は世界市場での輸出商品価格相場が軟化し続けていることをリスク材料に挙げている。農産物輸出の収入の伸びに制約となるためで、特にコメとゴムの輸出価格は今年第1四半期にそれぞれ27・0%、24・3%下落している。主要生産国での生産増と在庫が高水準にあることが理由となっている。また主要輸入国である中国とアジア域内経済は依然として減速している。主要工業製品の輸出価格の回復も遅れているため、タイの輸出価格指数は第1四半期に1・6%下落しており、通年でも弱基調が続くものと見られている。
新政権の発足が予測以上に遅れていることは、政府支出による景気下支えに対する大きな制約となっている。二〇一四年度予算の執行率は従来予測よりも低下しそうで、また二〇一五年度予算の編成作業も遅れる。このほかに二〇一四年の政府収入は編成時目標を下回りそうで、二〇一五年度歳出予算総額にも影響を及ぼす。一五予算年度の最初の四半期となる一〇~一二月期の政府支出は、予算法の制定遅れから多くを望むことができない状況にある。
政治混乱の長期化と景気全般の減速が続いていることは、家計消費支出の回復に対する制約になる。消費者信頼感指数は三月に58・7ポイントと、12年ぶりの最低水準まで落ち込んでいる。政治情勢は依然として高い不確実性の中にあり、消費者の信頼感と消費支出の回復は従来の予測以上に遅れそう。また一三年上半期は自動車販売台数が高水準に達していたため、耐久材の消費支出の伸びは下押しされる。乗用車の販売台数は第1四半期に58・2%減となっており、第2四半期も40~50%減が見込まれている。農産物価格はコメ、ゴム、メイズなどで前年を下回る水準にあり、農業所得の増加に対する制約となる。また金融機関は、第1四半期の経済のマイナス成長と通年見通しの悪化を受け、貸付の審査を一段と厳格にしそうで、消費支出にマイナスになる。
民間投資も、第1四半期に設備稼働率が61・8%まで低下していること、二〇一三年下半期から今年第1四半期にかけての投資奨励の申請額と認可額が減少していることが制約になる。投資家は新投資奨励政策が明確化するのを待っている。投資委員会は四月二二日に新委員が任命されたものの、年の残り期間に投資認可を受けるプロジェクトは、その後の法規に沿った各種の手続きを経る必要があり、年内に工場などの建設で経済システムに注入される資金には限りがある。さらに政治的不確実性と景気の減速は企業の業況判断を曇らせており、三月の業況判断指数は49・4ポイントと、9か月連続で中間値を下回っており、信頼感が回復する兆しも見られない。
二〇一四年の外国人観光客数は従来の予測を下回る見通しが強まっている。国内政治の不確実性と中国の安売りツアー規制の影響が予想以上に大きいためで、第1四半期の外国人観光客数は660万人、前年同期比で5・8%減となった。上半期の外国人観光客数は前年同期を下回る可能性が高い。
こうしたリスクを抱えながらも、通年のタイ経済がプラス成長を維持する見通しにあるのは、世界経済と世界貿易量の回復が見込まれていることが大きい。世界経済の回復は下半期に一段と鮮明になり、広範なものになると期待されている。世界経済が上向くことで輸出が回復することはタイ経済の成長の支援要因になる。主要工業製品では、自動車、電化製品などの輸出は増加に転じている。また主力市場の米国、欧州、日本向けの輸出は増加している。下半期に世界経済の回復がより顕著になり、広範な国・地域に広がることでタイの物品輸出も顕著に上向くものと期待されている。このほかにも石油価格やインフレ率が低い水準にとどまっていることは、金融政策に好都合で、金融当局は緩和を継続するものと期待される。
一四年に消費支出の伸びは全体で1・0%増となり、一三年の1・0%増から横ばいとなるが、前回予測の1・6%増を下回る見通し。民間消費の成長率は1・4%増から0・8%増に下方修正した。自動車に対する消費支出が収縮している上、第1四半期の支出が予想以上に減少したこと、さらには政治的不確実性から消費者の信頼感の回復が遅れることが下方修正の理由となっている。政府消費支出も前回予測の2・0%増を下回る1・8%増にとどまる見通し。経常的経費の執行率の設定値を96・6%から94・4%に下方修正したことが理由。
投資は1・3%減が見込まれ、前年の1・9%減に引き続き収縮する。前回見積もりは3・1%増だった。大幅な下方修正は、民間投資が景気の減速、設備稼働率の低下と投資奨励認可の遅れなどから従来見積もりの3・8%増から0・2%減に転じることと、政府投資が0・3%増から5・0%減に転じることが理由。一四年度の投資的経費の執行率の設定値は72・0%から70・8%に下方修正した。
一四年の米ドル建ての物品輸出額は3・7%増が見込まれている。一三年の0・2%減から上向くことになるが、前回予測の5・0~7・0%増からは下方修正した。輸出価格の設定値を前回見積もりの1・9~2・9%増から1・0~0・0%減に下方修正したことに加え、世界経済と世界貿易量の設定値も下方修正したことが理由。このため物品輸出数量の伸び率は前回見積もりの4・0~6・0%増に対し、4・2%増になる。また外国人観光客数の設定値も下方修正したことで、物品・サービス輸出数量の伸びは3・6%増と、二月時点の予測の6・0%増を下回ることになる。
米ドル建ての物品輸入額は0・5%増と予測され、一三年の0・4%減から上向くが、前回予測の5・7%増を下回る。輸入価格の設定値を前回予測時の0・5~1・5%増から1・0~0・0%減に修正したことに加え、金地金の輸入額の減少から第1四半期の輸入額が予想以上に収縮したこと、輸出、消費と投資の成長率の下方修正にともない、輸入需要も前回見積もりを下回ることが理由となっている。サービス輸入の予測の修正と合わせて、物品・サービス輸入数量の伸び率は1・3%増と、前回予測の4・6%増を下回る。
一四年の経常収支は19億ドルの黒字で、一三年の28億ドルの赤字から上向く。前回予測は6億ドルの赤字を見込んでいた。輸入額の減少幅が輸出額のそれを上回る結果、貿易収支の黒字が前回見積もりよりも増加することが理由。
一四年のインフレ率は1・9~2・9%増と予測した。
日付 : 2014年05月26日
By : 週刊タイ経済