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11月のインフレ率は1・26% 直近の5年間で最低水準に

 商業省が一二月一日に発表した一一月の消費者物価指数上昇率は1・26%増となり、前月の1・48%からさらに低下した。主に燃料価格の下落によるもので、世界市場の原油相場の下落により、国内燃油小売価格が下落した。一方、生鮮食品の物価は上昇したが、豚肉、鶏肉、果物などは下落した。市場出荷量が増えた一方で需要は横ばいだったため。商業省は今年通年のインフレ率の目標値を2・00~2・80%増の間に定めているが、インフレ圧力は低下傾向が続いている。(16面のデータ参照)

 一一月の消費者物価指数は前月比では0・12%減となった。非食品・飲料物価の下落によるもので、非食品・飲料物価は前月比で0・30%減となった。燃油の価格下落によるもので、オクタン価95ガソリンは3・92%、軽油は0・79%、ガソホール91は4・97%、ガソホール95は4・71%、ガソホールE20は4・31%値下がりした。ただし家賃、個人ケア、調理用ガスなどの価格は上昇した。食品・飲料物価は前月比で0・22%増。野菜、鶏卵、魚介類、惣菜、フライドチキンやピザなどの洋食の物価が上昇した一方、豚肉、果物は値下がりした。

 消費者物価指数は前年同月比では1・26%上昇した。食品・飲料物価は3・38%上昇した。非食品は0・14%増。一~一一月平均の消費者物価指数は前年同期比2・02%増だった。食品・飲料が4・00%上昇したが、非食品・飲料は0・98%増だった。

 一方、一般消費者物価から生鮮食品とエネルギーを除いた基本消費者物価指数は、一一月に前月比で0・11%増、前年同月比では1・60%増となった。タイ中央銀行は、基本消費者物価指数上昇率(コア・インフレ率)を0・5~3・0%増の枠内にとどめることを金融政策目標にしている。一~一一月のコア・インフレ率は1・57%増。

 一一月の生産者物価指数は前月比で0・5%減、前年同月比では1・7%減だった。農業製品の生産者物価は前月比で0・8%増、鉱業製品は1・7%減、工業製品は0・7%減となった。前年同月比では農業製品が1・3%減となったほか、鉱業製品は2・9%減、工業製品は1・8%減だった。一~一一月平均の生産者物価指数は前年同期比0・5%増で、農業製品が0・0%増、鉱業製品は5・1%増、工業製品は0・5%増。

 インフレ率の低下が6か月連続となったものの、アムパーウォン・ピチャライ商業省副次官は、原油相場に連動した燃油価格の下落が主因であることを強調。需要不足が原因ではないため、デフレを引き起こすものではないとしている。同副次官は、最終四半期(一〇~一二月)のインフレ率が1・6%増になると予測。下半期平均で1・8%増、通年平均では2・0%増になるとしている。

 アムパーウォン女史は、全国の小売店で一二月二四~三〇日に消費財を特価販売する商業省のキャンペーンについて、消費者物価に大きな影響を及ぼすことはないとしている。また原油相場が弱基調にあるため、二〇一五年第1四半期にインフレ率が急上昇することはありそうにないとしている。商業省の来年のインフレ率予測は1・8~2・5%増。

 タイ中銀は、世界市場の石油価格の低下と国内のエネルギー構造改革により、二〇一五年もインフレ率は低位にとどまると予測。貿易収支の改善につながるほか、生産・物流コストの低減で企業部門にも寄与するとの肯定的な見方を示している。一方、インフレ・ターゲットの金融政策の対象をコアインフレ率から一般インフレ率に変更する提案は内閣の承認待ちとなっている。

 中銀のヂラテープ・セーニーウォン・ナ・アユタヤ広報担当は一二月三日、二〇一五年第1四半期も原油価格は弱基調が続き、インフレ率が低位にとどまると見ていることを明らかにした。原油はシェール革命による米国やカナダの生産増から供給が増える一方、需要は世界経済の減速から伸び悩んでいる。OPECは世界の原油市場でのシェアを維持したい思惑から、減産に踏み切る可能性は低く、原油相場は今後も弱基調が続くと見ている。またこうした原油安は2年ほど続く可能性があると見ている。ヂラテープ氏は、石油製品のタイの消費はGDPの12%を占め、消費の7割が物流に使う軽油であることから、原油安は貿易収支の改善と企業部門のコスト低減に寄与するとしている。

 ヂラテープ氏は最近のインフレ率の低下について、原油安というコスト面の要因によるもので、需要不足が主因ではないことを強調。デフレが生じる可能性は想定しておらず、国の経済が正常な成長軌道に戻れば、インフレ率も上昇に向かうと見ている。


日付 : 2014年12月08日

By : 週刊タイ経済

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