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外国人事業法の改正 首相が一時棚上げを示唆

 プラユット首相は一二月三日、タイ外国人合同商工会議所が主催した昼食会で、外国人事業法の改正を棚上げすることを示唆した。首相は、同法は今のところ手をつけず、将来的に実施する場合でも、より良い方向へ改正すると述べた。同法改正は、商業省による改正の動きが表面化して以降、外国企業の中で懸念が強まっていた。

 チャッチャイ・サーリガラヤ商業相はこれより前、同法の改正について、政府方針は投資奨励、事業運営のための手続の簡素化、貿易と投資の簡易化という3つの原則を有しており、国の競争心を強化し、貿易・投資を促進するために現在進めている国家改革での法改正プロセスの一部だと説明。国際的な標準に従って法律を改めることが狙いで、投資マインドにマイナスの影響を及ぼすものではないことを強調していた。

 首相は昼食会のスピーチで、第3四半期(七~九月)に家計消費が上向き、民間投資が改善していることを指摘。二〇一四年の経済成長率は1%増程度にとどまるが、一五年は2~3%増が予測されるとした。投資委員会(BOI)への投資申請も増えており、二〇一五年には外国からの直接投資が一四年比で2倍になることを期待しているとした。景気回復ペースは国内外の要因のため速くはないものの、経済を前進させるための手段はあるとも語り、第4四半期(一〇~一二月)に景気が上向き、その勢いは二〇一五年も持続するとした。

 首相は約800人の外国人ビジネスマンを前に、政府が低所得層の雇用と所得の拡大を目指して財政支出を増やそうとしていることを伝え、「こうした施策はあなた方の製品を買うために、人々により多くのお金を与えるものだ」と説明している。また近隣国や中国とタイの接続性を良くする運輸通信分野の基本インフラの拡充についても概説した。経済特別区(SEZ)の創設は輸出を増やす効果があり、タイに拠点を持つ外資系企業が近隣国にも進出する「タイ・プラス1」の潮流についても認識していることを強調。この種の投資に興味があるなら、5か所を計画しているタイ領内のSEZやミャンマーのダウェーに出て欲しいとアピールした。

 このほかに首相は、デジタル・エコノミー政策についても説明している。首相は、タイはすでにASEANのハブであり、情報通信技術インフラもそれを反映して拡充する必要があるとした。

 プリディヤトーン・テワクン副首相は質疑応答のセッションで、多国籍企業の国際統括本部(IHQ)と国際取引センター(ITC)の誘致政策について説明した。現在の地域統括事務所(ROH)の振興措置が多くの規制や障壁のため、目立った成果を得ていないことが背景にある。既存のROHよりも少ない資本金でも投資奨励を行ない、駐在員の査証や就労許可取得で便宜をはかるほか、個人所得税も減免する考え。こうした外資企業の地域本部に与えられる新たな優遇策は、現地関係会社から得る役務・権利・配当収入の法人税減税、地域本部が海外法人から受け取る、または支払う配当金などに対する源泉税の免除、タイ国内で調達した原材料や中間財の海外法人への販売で得る収入に対する法人所得税減税など。またこれら本部勤務の外国人専門家や経営者の個人所得税も減税措置を受ける。

 プリディヤトーン副首相は、労働許可と90日滞在ルールがここ数年、外国企業の不満の中心にあることを示し、IHQとITCプログラムの導入と合わせて労働許可は最長2年の自動更新とし、90日報告も不要にすると述べている。また外資規制に関しては、保険や通信を除くサービス部門で2年内に自由化すると述べている。

 外国人合同商工会議所(JFCCT)のスタンレー・カン会頭は、IHQとITCに関して、直接投資にプラスの効果があるとの見方を示した。カン会頭は、二〇一五年末にASEAN経済共同体(AEC)が発足することからも、タイがIHQとITCの投資誘致に動くことは時機を得ていると評している。また外国人事業法の改正の動きに対しては、既存法は十分に厳しく、これ以上の規制は必要ないとしている。


日付 : 2014年12月08日

By : 週刊タイ経済

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