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プラユット内閣が発足 議会での所信表明後に本格始動

 プミポン国王陛下が八月二五日にプラユット・チャンオーチャー首相を認証したことを受け、同大将は組閣作業を急ぎ、32人からなる閣僚名簿をまとめた。閣僚の国王認証(署名)は三一日になされ、九月四日夕方にシリラート病院内で宣誓式が執り行なわれた。首相は国益、国民の利益を第一とし、正直、誠実に任務を果たしていくとしている。

 プラユット首相率いる内閣は宣誓式後、直ちに会議を開き、深刻な被害が発生しているスコータイ県の洪水問題の解決策などについて協議した。陸軍司令官でもある首相は、五日以降も陸軍司令部で執務し、七日に開く初閣議のため首相官邸入りする予定。一方、一部の副首相と国務大臣は五日に初登庁し、執務を開始している。暫定憲法は内閣の議会での所信表明を規定していないが、プラユット内閣は慣例にならって国家立法議会で施政方針を明らかにする考えで、早ければ九日、遅くとも来週中に行なわれるもよう。

 プラユット内閣の顔ぶれは、国家平和秩序維持団(NCPO)のメンバー(制服組)と顧問(非制服組)、元高級官僚が中心。筆頭副首相にはNCPO顧問であるプラウィット・ウォンスワン陸軍大将が就任した。〇六年のクーデタを率いたソンティ・ブンヤラットグリン大将の一代前の陸軍司令官で、アピシット政権で国防相を務めた。同大将は国防大臣を兼務する。経済担当の副首相にはプリディヤトーン・テーワクン氏が就任。NCPO顧問で、スラユット暫定政権で科学技術相を務めたヨンユット・ユッタウォン氏も副首相に任命された。また副首相兼外相にはタナサック・パティマープラコン国軍最高司令官が就任した。暫定憲法の起草に関わったNCPO顧問のウィサヌ・クルアガーム氏も副首相に就任した。

 財務大臣にはソムマーイ・パーシー氏が就いた。財務省OBのソムマーイ氏は、スラユット暫定政権でも財務副大臣を務めている。プラユット内閣では財務副大臣は任命されておらず、ソムマーイ氏が財務省のすべての部局を統括することになる。運輸大臣にはNCPO副団長で経済行政を担当してきたプラチン・チャントーン空軍司令官が就任。国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局長のアーコム・トゥームピタヤーパイシット氏が運輸副大臣として補佐する。エネルギー相には、エコノミストとして著名なナロンチャイ・アカラセラニー氏が就任した。ナロンチャイ氏はタクシン政権で商業相を務めた。〇六年クーデタ後に設置された国家立法議会の議員を務め、現在の国家立法議会でも議員に就任している。

 内相には前陸軍司令官のアヌポン・パオチンダー大将が就いた。内務官僚のスティー・マークブン氏が内務副大臣として補佐する。また教育相にはNCPO副団長のナロン・ピパタナーサイ海軍司令官が就任。クリットポン・ギラティコーン氏とスラチェート・チャイウォン陸軍中将が副大臣として補佐する。現内閣で、副大臣が2人任命されているのは教育省のみとなっており、教育改革に取り組む。

 観光・スポーツ相には、東芝タイランド会長のコープカーン・ワタナワランクーン女史が起用された。同女史は国家立法議会議員にも任じられている。女性閣僚はコープガン女史と、商業副大臣に就任したアピラディ・タントラポーン女史の2人。農業・協同組合相にはピティポン・プンブン・ナ・アユタヤ氏、文化相にはウィーラ・ロートポチャナラット氏、科学技術相にはピチェート・ドゥロンカウェーロート氏が、保健相にはラチャタ・ラチャタナーウィン氏が就任した。また工業大臣にはチャクラモン・パースクワニット元工業省次官が就いた。

 プラユット首相は、閣内に軍人が多いことについて、安全保障問題に取り組む必要からだと弁明している。批評は甘んじて受けるが、内閣が効率的に機能するためには自身が信頼する人物を多く起用する必要があったとしている。軍出身の大臣は運輸、商業、内務、教育、外務、国防、法務などの重要な省を統括するが、財務、エネルギー、工業などの経済省はテクノクラートに委ねた。また軍人が舵取りする一部の省では官僚OBを補佐役となる副大臣に起用している。

 プラユット首相は、この内閣にとって経済は最優先事項になると述べている。プラユット内閣の経済チームは、NCPOの経済顧問団長でもあるプリディヤトーン氏が率いることになる。プリディヤトーン氏はタクシン政権時にタイ輸出入銀行総裁からタイ中央銀行の総裁に起用され、中銀総裁時には1回の政策決定会合で政策金利を大幅に引き上げたことがある。またスラユット政権で副首相兼財務相を務めた際には、中銀によるバーツ高対策のための資本流入規制を支持しており、大胆な政策や措置の導入を躊躇しない性格。外資の信頼感の回復、二〇一五年終わりのASEANの経済統合に向けた各種の取り組み、政府のインフラ投資プロジェクトを通じたタイ経済のポテンシャル強化、農産物価格下落問題への対処など職責は重い。

 財務大臣に就任したソムマーイ氏は、スラユット内閣で正副財務大臣としてプリディヤトーン氏と一緒に仕事をしたことがあり、経済格差是正のための税制改革や、政府歳入を増やすための徴税ベースの拡大や効率化に二人三脚で取り組んでいくことになる。2兆4000億バーツのインフラ開発計画の財源の確保もソムマーイ財務大臣の重要な仕事になる。ソムマーイ大臣は五日の初登庁時の談話で、軍政の意向にしたがって物品税改革、相続税、固定資産税の実現に全力を挙げるとしている。また、個人的には景気循環によるタイの景気の減速に不安は感じていないが、景気対策での特別措置を検討していると述べている。

 一方、チャクラモン工業相は、工場建設許可取得手続きの簡素化・迅速化や中小企業の役割強化、砂糖・サトウキビ産業の改革などに取り組む。チャクラモン氏は五日に初登庁し、国境地帯における経済特別区(SEZ)の設置、産業廃棄物処理制度の徹底を優先事項に掲げている。産廃処理に関しては、タイの法律は世界的に見ても最も厳密なものだが、問題は法の執行にあると述べている。さらに重要な案件として、許可権限者への贈収賄は駆逐しなければならないとしている。こうした問題に体系的に取り組めば、産業廃棄物問題は解決できるとしている。

 ナロンチャイ・エネルギー相は、プリディヤトーン副首相とともにNCPOの経済顧問の地位にある。入閣経験も豊富で、幅広い知見と経験を有していることは、利害関係が絡むエネルギー改革の実行にプラスになりそう。エネルギー消費の効率を高めるにあたって、補助金によって価格構造を歪めることはマイナスで、補助金の撤廃が必要。PTTが所有する送ガス管をめぐる論争も早急な解決が求められる。

 プラユット首相は二日の会見で、内閣の任期について、仕事を進めるにあたっての障害となっては元も子もないため、取り立てて期日を設けることはしたくないと述べている。この日の会見では、国家立法議会での所信表明と合わせて5人の副首相の職務分掌を速やかに決めたいとしている。NCPOは引き続き仕事を継続するが、その役割は低下するとした。閣僚の人選については知見と能力、国を前進させるために共同作業のできる人物を選んだとし、内閣の堅持する原則は「タムコーン・タムチン(先にする、本当にする)」だと述べている。


日付 : 2014年09月08日

By : 週刊タイ経済

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