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プラユット大将が第29代首相に NCPO団長兼職で権限集中体制維持

 国家立法議会は八月二一日、プラユット・チャンオーチャー陸軍大将を満場一致で首相に指名した。同大将は国王認証を得て第29代首相に就任し、組閣に入る。内閣の発足は九月第1週の見通しで、その後に初閣議、議会での所信表明演説後に正式に国政に当たることになる。

 二一日の立法議会には全197人の議員のうち3人が欠席し、正副議長3人を除く191人全員がプラユット大将に票を投じた。議員から首相候補として名が挙がったのは同大将1人。ノララット・ピムセーン上院事務局長は、プラユット大将の資格を検証後、国王秘書局に提出すると語っている。国王署名後に認証式が行なわれ、正式に就任するのは週末の二三日か二四日になるもよう。

 五月二二日のクーデタを主導したプラユット大将の首相就任は、早くから既定路線になっており、暫定憲法を発布した時点でクーデタ団(NCPO)団長との兼職も予想されていた。同大将は九月末に陸軍司令官を定年退官することになっているが、任期延長説も出ている。そうなれば3ポスト兼職となり、タイの政治史上かつてない権力集中体制となる。ただし定年問題は、主要閣僚として入閣が確実視されているNCPOの他の主要メンバーも同じで、その1人であるプラチン・チャントーン空軍司令官は任期延長しない考えを示している。プラユット大将が予定通り退官する場合、軍の事実上の最高権力者である陸軍司令官ポストは、プラユット大将の右腕の1人、ウドムデート・シータブット陸軍副司令官が引き継ぐとの見方が有力。

 クーデタ団の団長が首相に就任することについて、タイ国内では声高な反対意見は出ていない。これは戒厳令下で言論規制が敷かれていることが影響しており、赤シャツ派幹部の1人であるコーケオ・ピクントーン前下院議員は新首相に早期の戒厳令解除を求めている。また赤シャツ派のスポークスマンであるタナウット・ウィチャイディット氏は、本来内閣を監視すべき議会が軍によって任命されていることを理由に、透明な政権運営は期待できないと述べている。

 唯一、NGO代表のシースワン・ヂャンヤー氏が違憲の疑いがあるとして、二二日に国家オンブズマンを通じ憲法裁判所に憲法判断を求めた。シースワン氏は地球温暖化防止協会の会長としてマプタプット公害訴訟などの原告になってきた人物。同氏によると、NCPO団長の首相就任は利益相反であり、行動規範から逸脱していると主張している。

 経済界はプラユット首相の誕生を歓迎している。強い権限を持ってインフラ事業など経済対策を早急に実施する姿勢を評価している。一方で一年余りで国の問題をすべて解決するのは難しいという意見も出ている。アピシット・ウェーチャチーワ民主党党首は、新首相の任務は国家改革とともに、低迷する経済の建て直しにあると指摘。生活費上昇問題を解決して欲しいと要求している。


日付 : 2014年08月25日

By : 週刊タイ経済

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