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週刊タイ経済
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BOI本会議
PCBの投資優遇を拡充
大規模イベントも奨励へ

 投資委員会(BOI)は3月28日に開いた本会議で、プリント基板(PCB)事業への投資奨励措置の拡充を決定した。スマート・エレクトロニクス、EV、医療機器など、様々な産業で使用される電子機器の心臓部で、世界的な地政学的対立によって大規模な生産拠点再配置の動きが生じていることから、PCB生産をサポートする事業や主要原材料の生産事業を含めたサプライチェーン全体で投資を誘致していく。機械輸入関税と輸出向け生産の原材料輸入関税の免除に加え、最長8年間の法人税免除特典を付与する。
 昨年には中国、台湾、日本などから約40社がPCB生産で投資申請しており、合計投資予定額は約1000億バーツを数える。
 ナリット・トゥードサティラサック事務局長によると、PCB生産のサプライチェーン全体をカバーする投資優遇により、世界的な生産拠点移転の動きに対応することが狙い。外資の進出以外にもタイ資本による投資も期待している。同事務局長はタイ企業のビジネスチャンスを増やし、共に成長できるよう支援していくと述べた。
 具体的にはPCB事業の定義を改め、ラミネーション、ドリリング、プレーティング、ルーティング、テスティングなどの関連サービスを投資奨励の対象に加えるほか、基板製造のベースとなる銅張積層板(CCL)、フレキシブルCCL、CCLの絶縁材料であるプリプレグなどの生産や、ドライ・フィルム、トランスファー・フィルム、バックアップボードなどの原料生産も対象に加える。
 現在、タイは東南アジア最大のPCB生産拠点になっているが、川上から川下までをカバーする新たな産業クラスターとしてPCBクラスターの生成につなげることで、エレクトロニクス産業基盤の一層の強化を図る。ナリット事務局長は、エレクトロニクス産業の中核であるPCB生産のサプライチェーンを構築できれば、タイが将来的には世界をリードするエレクトロニクス生産拠点となることも可能だと指摘している。
 この日の本会議ではこのほか、「音楽、スポーツ、国際フェスティバル開催事業」への投資奨励を承認した。大規模イベントを開催する際のビザや労働許可などの障害を取り除くことで、世界的なイベントを誘致し、タイの観光ハブとしてのポテンシャルを強化することが狙い。アーティストやスタッフがイベントで使用する目的でタイに持ち込む楽器その他の機材にまつわる税負担の問題も解消する。投資申請の基準は1回のイベント開催の投資額または開催経費が1億バーツ以上あることで、イベントに使用する機材などの輸入関税が免除されるほか、外国人アーティストやスタッフのビザや労働許可書もワンストップサービスを通じて容易に取得できるようにする。ナリット事務局長は、タイが世界的なイベントの開催地になれば世界中から観光客を惹きつけることができると見ている。

輸出が7か月連続で増加
2月の輸出額は3.6%増

 商業省が3月26日に発表した2月の物品輸出額は233億8490万ドルで、前年同月比3・6%増となった。物品輸出の前年同月比での増加は7か月連続。石油/金地金/武器を除いた輸出額は2・3%増だった。1~2月の輸出額は460億3470万ドルで前年同期比6・7%増。
 2月の物品輸入額は239億3890万ドルで、前年同月比3・2%増。貿易収支は5億5400万ドルの赤字となった。
 2月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出は1・1%減で、前月のプラス成長からマイナス成長に転じた。農産物の輸出が7・5%増となった一方、アグロインダストリー製品は9・2%減少した。1~2月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出は3・7%増。
 2月の工業製品の輸出額は5・2%増で、5か月連続で増加した。1~2月では7・7%増。
 仕向け地別に見ると、2月の主力市場向け輸出は2・7%増だった。米国向けが15・5%増、EU(27)向けが3・3%増、CLMV向けが4・5%増となった一方、中国向けは5・7%減、日本向けは5・8%減、アセアン(5)向けは1・2%減だった。
 キラティ・ルチャノー商業省次官は、米、ゴム、ペットフード、自動車、電子機器などの主要製品の輸出が改善の兆しを見せ始めているため、今年第1四半期の輸出額は前年同期比1~2%増を見込んでいる。3月の輸出額は255億~265億ドルを見込むが、昨年3月の輸出額が280億ドルに達していたため、3月は5・4%~8・9%減のマイナス成長になる見通し。比較ベースとなる23年3月期には、金地金輸出額が15億6870万ドルと異常に大きな額を記録していた。同次官はEUや日本を含む主要貿易相手国経済の回復で製造業が回復するにつれ、工業製品の輸出は着実な成長が期待できるとした。一方で農産物は旱魃の影響が気がかり。また地政学的リスクと為替変動はタイの輸出全体にとってのリスクになると指摘している。商業省は今年通年の輸出額が前年比1~2%増になると見積もっている。

ソニー・デバイス(タイ)
イメージセンサー新工場

 ソニー・セミコンダクタ・ソリューションズ社は3月28日、タイの半導体製造事業所の敷地内に建設を進めてきた新棟の竣工式を行なった。すでに今年2月より生産ラインの稼働を開始している。イメージング&センシング・ソリューション事業の後工程を担う生産拠点。
 タイ現地法人のソニー・デバイス・テクノロジー(タイランド)社は、パトゥムタニ県バンカディ工業団地の工場敷地に新たに建設した「4号棟」で、車載用イメージセンサーやディスプレイデバイス、そしてデータセンター向けの半導体レーザーなどを生産する。約2000人の雇用を見込んでおり、市場動向に応じて4号棟の生産設備の拡充を図っていくことで、各製品の生産能力を増強していく計画。
 ソニー・デバイス(タイ)の松田健社長によれば、同社は21年度から再生可能エネルギー100%による稼働を達成している。4号棟のクリーンルームにおいても、必要な部分に絞って清浄度や温湿度を管理する空調システムや、廃熱・温水を再活用するリサイクル技術を採用した。年内には4号棟の屋根のほぼ全面に太陽光パネルを設置し、稼働させる計画。省エネ化に加え、再生可能エネの利用を加速することで、4号棟の稼働後も引き続き再生可能エネルギー100%による稼働を維持していく。

2月の自動車生産
13万3690台、19%減

 タイ工業連盟(FTI)自動車部会が3月26日に発表した2月の自動車生産台数は13万3690台で、前年同月を19・28%下回った。生産台数は前月比でも5・92%減少した。国内市場向け生産が大幅に減少し、輸出向け生産も減少した。1~2月の生産台数は27万5792台で、前年同期比15・90%減。
 2月の乗用車の生産台数は5万441台で、前年同月比14・56%減。内訳はエンジン車が2万9587台(34・25%減)、バッテリーEVが766台(1602・22%増)、プラグイン・ハイブリッド車が541台(52・96%減)、ハイブリッド車が1万9547台(52・19%増)だった。乗用車の生産減は、タイ国内市場で中国からのEVの輸入が増加し、輸入車の市場シェアが上昇していることが背景にある。バスの生産台数は10台(前年同月はゼロ)、トラックは8万3249台(21・88%減)だった。トラックのうちピックアップ車(PPVを含む)は8万252台(22・77%減)だった。ピックアップの生産減は国内市場の収縮が響いている。
 2月の輸出向け生産台数は8万6762台で、前年同月比9・26%減。生産台数全体の64・90%を占めた。乗用車の輸出向け生産台数が2万5497台と、前年同月比で0・71%増加した一方、ピックアップ車(PPVを含む)は6万1265台(12・85%減)だった。
 国内市場向け生産台数は4万6928台で、前年同月比35・10%減。乗用車の生産台数は2万4944台で、26・03%減。ピックアップ車(PPVを含む)の生産台数は1万8987台で、同43・52%減。
 国内新車販売台数は2月に5万2843台となり、前年同月を3・60%下回った。乗用車/SUVは3万1537台(9・14%減)で、内訳はエンジン車が1万3360台(41・38%減)、バッテリーEVが4731台(28・56%増)、プラグイン・ハイブリッド車が255台(8・93%減)、ハイブリッド車が1万3190台(65・77%増)だった。ピックアップ車は1万5535台(43・15%減)、PPVは3304台(47・61%減)、5~10トン・トラックは1471台(28・00%減)、その他が997台(14・42%減)だった。ピックアップ車の販売減は金融機関が不良債権化を恐れてローン実行を抑制していることが響いている。スラポン・パイシットパタナポン広報担当は、国内市場の縮小を懸念しているが、下半期には政府支出を通じた景気回復に期待している。
 一方、2月の輸出台数は8万8720台で、前年同月比2・31%増。
 FTIの今年の生産目標は、輸出向けが23年の115万6035台をやや下回る115万台。国内市場向けは前年の68万5628台を9・39%上回る75万台に設定している。

タイ中銀の月例経済金融報告
3月29日の発表より

 24年3月のタイ経済は総じて低成長にとどまっている。サービス業は観光収入と観光客数の大幅増を受けて成長を続けている。民間投資と工業生産は一部で改善した。他方、民間消費は横ばい。しかし金地金を除く物品輸出額は減少した。多くの商品群が依然として世界需要の回復の遅れとタイの製造業の構造的要因から下押し圧力を受けている。政府支出では中央政府の経常的経費と投資的経費の執行額が収縮した。
 経済安定性に関しては、一般インフレ率はマイナス幅が縮小した。世界市場の原油価格に連動してガソリン価格が上昇した。他方、コアインフレ率は小幅低下した。食品物価の下落によるもので、前年の価格水準が高いハイベース効果の影響を受けた。労働市場は前月から横ばい。製造業の雇用減少がサービス業における雇用の拡大を打ち消した。企業部門の借入、債券、株式発行による資金調達は総じて増加した。経常収支は黒字だった。貿易収支とサービス・所得・移転収支の黒字による。
 2月の景気動向の詳細は次のとおり。
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 外国人観光客数は季節調整済み前月比で引き続き増加した。中国からの観光客がビザ免除措置と中国正月により増加した。マレーシアからの観光客は、例年よりも早いラマダンを前に増加した。日本からの観光客も大型連休を受けて増加した。
 民間投資の指標は季節調整済み前月比で引き続き増加した。設備投資では多くのカテゴリーで資本財輸入が増加した。特にコンピュータ/同関連機器の輸入が高い伸びとなった。しかし建設投資は減少した。建材販売数量が減少した一方、建設許可面積は横ばいだった。工業団地での工場の建設は増加した。
 工業生産指数は季節調整済み前月比で上向いた。前月の製油所のメンテナンスによる休止明けで石油生産が加速した一時的要因による。加えて化学薬品の生産が上向いた。中国向け輸出増に沿ってプラスチックと合成ゴムの生産が増加した。また食品/飲料の生産も増加し続けている。ペットフードやアルコール飲料の生産が増え続けている。しかし自動車の生産は乗用車、ピックアップ・トラックともに収縮した。
 民間消費の指標は季節調整済み前月比で横ばい。この月にはサービスと非耐久財への支出が増加した。政府部門のエネルギー価格助成とショッピング減税が寄与している。一方、耐久財の消費は減少した。特に乗用車の販売台数が減少した。消費者の信頼感は改善を続けている。政府の経済対策が支援要因の一つになっている。
 金地金を除く物品輸出額は、多くの物品カテゴリーで季節調整済み前月比で減少した。エレクトロニクス製品では、通信機器部品の米国向け輸出が落ち込んだほか、集積回路とハード・ディスク・ドライブの中国/香港向け輸出が減少した。自動車は主にオーストラリア向けのピックアップトラックの輸出が減少した。石油製品はアセアン向け輸出が収縮した。ただし一部の物品の輸出は増加している。例えば砂糖のアセアン向け輸出、太陽電池の米国向け輸出やエアコンの欧州向け輸出が伸びた。
 金地金を除いた物品輸入は、季節調整済み前月比で増加した。資本財の輸入増によるもので、特にコンピュータの台湾からの輸入と機械の欧州からの輸入が増えた。消費財では衣料、医療機器、化粧品、食品の輸入が増加した。
 移転金を除く政府支出は前年同月比で収縮した。24年度予算の成立遅れから中央政府の投資支出が減少した。経常的経費の支出も、主に教育機関の予算執行のずれ込みによるハイベース効果から減少した。また前年には電力料金補助と観光刺激策の予算執行もあった。国営企業の投資は収縮した。運輸分野のプロジェクトの予算執行により前年の数値が高くなっていたハイベース効果が一因。
 経済安定性では、一般インフレ率はマイナス幅が縮小した。主に世界市場の原油価格に沿ってガソリン系燃料の価格が上昇したことによる。他方、コアインフレ率は小幅低下した。前年のハイベース効果で食品の物価が下がった。ただし非アルコール飲料や外食の物価は前月比で上昇している。労働市場は前月から横ばい。製造業の雇用減少はサービス業の雇用の拡大が穴埋めした。経常収支は黒字。貿易収支とサービス・所得・移転収支が黒字だった。企業部門の借入、債券、株式発行を通じた資金調達は総じて増加した。運転資金、事業拡張に加え、一部は債務返済を目的としたものだった。バーツの対ドル・レートは平均すると下落した。市場は米国経済の指標が予想以上に良かったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き下げ時期が遅れると観測した。

最近の更新 2024年04月08日
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