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最大110万台の買替需要 国内自動車市場 下半期以降

 自動車業界は国内の自動車市場が下半期に上向くものと期待している。通年の新車販売台数は72~76万台にとどまりそうだが、今年最終四半期(10~12月)には5年前の初めての新車政策の所有義務期間が満了することから、その後最大で110万台の買い替え需要が生じる見通し。自動車各社は買い替え需要を取り込むべく、新モデルの投入を計画している。

 タイ国トヨタ自動車の最新統計によれば今年1~5月の新車販売台数は30万2581台で、前年同期を2・0%下回っている。5月期だけを見れば、販売台数は6万6035台で前年同月比16・0%増を記録している。特に1トン・ピックアップ車の5月の販売台数は2万8904台を記録し、前年同月を22・4%上回った。雨季入りによる旱魃の終焉と農産物価格の反発で農業所得が上向いていることや非農業部門の雇用の拡大が新車需要を高めている。

 タイの新車市場は2012年に年間140万台を超えたのをピークに、以後3年連続で収縮し、昨年の販売台数は80万台を割り込んだ。市場の収縮が続いているのは、インラック政権時の11年に導入された「新車購入奨励政策」によるところが大きい。この政策が特需をもたらした結果、その反動減が顕著に表れた格好。この政策では125万台を超える税還付の申請があった。実際に還付を受けたのは約110万台。5年間の保有が条件になっており、今年9月15日以降、保有義務がなくなるため、最大で110万台の買い替え需要が生じることになる。

 タイ工業連盟(FTI)自動車部会スポークスマンのスラポン・パイシットパタナポン氏は、消費者の購買力が上向いていることや、民間投資の回復、さらには買い替え需要の発生を根拠に下半期の新車市場が上半期を上回ると見通している。ただしある大手ディーラーは、今年最終四半期の買い替え需要は多くを期待できないと指摘している。新車購入奨励政策が導入されたのは11年最終四半期だが、この時期には大洪水が襲ったこともあり、実際に新車販売が激増したのは翌12年の3、4月頃。また昨年最終四半期は、今年初めからの自動車の物品税改定を前にした駆け込み需要も発生していたため、今年最終四半期は比較ベースとなる前年同期の数値が高いハイベース効果も生じる。

 スラポン氏は、最大手のトヨタが減産を理由に800人規模で人員を削減するとしたリストラ策を発表したことについて、自動車工業が雇用する6~10万人の従業員のごく一部でしかないことを強調。自動車工業全体の斜陽を反映するものではないと強調した。新車購入奨励政策の負の影響は強力で、タイの新車市場を圧迫し続けているものの、国の経済のファンダメンタルズは強靭で、6000㌦の国民1人あたり所得から想定して、90万台の市場規模はあるとしている。


日付 : 2016年07月11日

By : 週刊タイ経済

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