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投資刺激で政策総動員 経済成長の上積み期待

 2016年のタイ経済は、15年に引き続き政府支出が景気を下支えする見通しで、官民の多くの研究機関が成長率の上昇を予測している。ただし成長率の予測値は、2・8%増にとどまったと見られる15年をわずかに上回る程度で、目に見える形で景気の回復が実現するかどうかは民間投資が上向いてくるかどうかにかかっているとの見方で一致する。プラユット政府の経済チームは、昨年終わり、民間投資を刺激するための措置を矢継ぎ早に打ち出しており、政策の効果が現れるかどうかを注視している。

 タイ中央銀行は12月終わりに発表した金融政策委員会(MPC)の『金融政策リポート』最新号で、16年の経済成長率を3・5%増と見積もっている。15年に比べると成長率は上昇するものの、潜在成長率を下回る水準にとどまる。主因は外需の不振で、16年の物品輸出は、せいぜいゼロ成長、15年までの3年連続の収縮から微増に転じれば満足していいというのが大方の見方となっている。中国経済の減速が続き、これがアセアン経済全体にも負の影響を及ぼすことが背景にある。政府支出、民間消費、観光は成長が加速する見通しだが、外需の不振を完全には穴埋めできないと見られている。

 タイ中央銀行のウィラタイ・サンティプラポップ総裁は、16年の経済成長率に関し、民間投資が鍵を握ると見ている。政府の運輸インフラ・プロジェクトが経済成長を牽引するものの、GDPに占める政府投資の比率から寄与度は限られるためだ。

 投資促進策は投資委員会(BOI)を通じた特別支援策が打ち出されているが、財務省も独自に多くの支援措置を設けており、BOI認可を得ていないプロジェクトも多くの税制優遇を受けることが可能になっている。

 ソムチャイ・サッチャポン財務省次官は、政府支出と観光セクターが景気を牽引し、さらに民間投資が成長率を上積みするとしている。その上で、財務省が民間投資の刺激、さらには国の競争力の底上げや新成長エンジンとなる将来産業の投資誘致を含めた投資支援の政策を総動員していることを強調した。

 今年の民間投資を刺激する措置として財務省は、新規に投資した設備の減価償却費を2倍計上できる優遇策を打ち出している。またインフラ・プロジェクトでの官民連携(PPP)でも25か月はかかる審査手続期間を9か月に短縮する「ファスト・トラック」の仕組みを設けた。

 新たな成長エンジンとなる将来産業への投資支援では、ターゲット産業に10~15年間、法人所得税を免除するほか、外国人専門家の個人所得税も免除する。さらに投資の経費や研究開発・イノベーション、人材の育成費用や金利費用を補助するための総額100億バーツの「競争力強化基金(Competitiveness Enhancement Fund)」の組成も決めている。研究開発の経費については19年まで、費用の3倍を損金計上できる措置も導入している。

 タイをアセアンの投資ハブにするための特別優遇では、企業の国際本部(IHQ)や国際通商会社(ITC)の誘致で税制優遇を設けている。法人所得税を10%に引き下げ、外国人専門家の個人所得税も15%に引き下げる。特別経済区(SEZ)への投資誘致では、法人所得税を10年間にわたって10%に引き下げる措置を設けている。


日付 : 2016年01月11日

By : 週刊タイ経済

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