ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

バーツ安がさらに進展 35バーツ台が目前に

 四月終わり以降、弱基調が続いているバーツ相場は先週急落し、1ドル=35バーツ台を目前とするところまで下げている。七月二四日の中銀参照レート終値は1ドル=34・878バーツ。タイ中央銀行のチャンタワーン・スチャリッタクン総裁補は、バーツの動きを密接に見ており、今のところ不規則な動きは見られないとしている。

 バーツは対ドルで、七月にアジア通貨の中では韓国ウォンについで2番目に大きな下げ幅を記録している。チャンタワーン総裁補は、バーツの現在の弱基調について、景気の回復を支援するものだが、予想を上回るテンポでのバーツの減価は、リアルセクターの調整にとって障害になる恐れがあると指摘している。バーツ安は域内通貨のトレンドに一致したものだが、先週に限れば突出した値動きになっている。他の域内通貨が0・3~1・5%の減価率となっている一方で、バーツは2%の下げ幅となった。外国人投資家によるポートフォリオ調整と輸入業者によるドル買い需要が一因と見られるが、同総裁補は、通貨投機のシグナルは見られないとしている。カシコン銀は、バーツの急落には金融当局の思惑が関係しているとの見方を示している。中銀は低迷する景気を下支えするため、政策金利を2回にわたって引き下げているが、金融緩和による景気浮揚の効果は限られる上、政策金利はすでに年1・25%まで下がっており、金利の下げ余地も乏しくなっている。これに対し、バーツ安は輸出依存度の高いタイ経済にとっては、景気の浮揚効果が期待できる。

 ある通貨ディーラーは、タイの経済成長に対する懸念がバーツ安の根底にあると見ている。物品輸出、個人消費、民間投資の低迷が予想以上に長引いており、景気の先行き展望は悪化している。こうした情勢に対する投資家の反応はすでに株式市場に反映されており、外国人投資家は年初来、株式市場で350億バーツ超を売り越している。特に七月に入ってからの売り越し額は200億バーツを超えている。大規模インフラ・プロジェクトの遅延や旱魃危機の高まりも、バーツの売り材料になっている。また海外の材料では、米国連邦準備制度理事会(FRB)による年内の利上げ方針、金相場が1オンスあたり1100ドルを割り込むまで下げたこと、ギリシャ危機などは、ドル高要因となっている。ある通貨ディーラーは、バーツが今年最終四半期には35バーツ台に下落し、最終的に35・25バーツの水準まで下げると見ている。

 一方、次期中銀総裁に指名されているウィラタイ・サンティプラポップ氏は七月二二日に国家立法議会が主催した公開討論会で、タイ経済の成長ポテンシャルと競争力の維持・向上において、投資の重要性を指摘し、投資水準の引き上げのためのインセンティブの見直しが必要との認識を示した。低調な投資は雇用を低下させ、タイの輸出競争力も低下させると述べている。ウィラタイ氏は二〇一一年の洪水以降、民間投資が停滞し、大半の投資が建設セクターに集中していることを指摘している。活発な投資が行なわれているのは通信や再生可能エネルギー、ロジスティック分野ぐらいで、他の産業の投資は減少している。これを反映して機械輸入は3年連続で前年比減となっている。投資委員会(BOI)による認可プロジェクトの多くは小規模なもので、グローバルな大企業による大型投資はほとんどなくなっている。

 エカニット・ニティタンプラパート財政局次長は、官民を合わせた投資支出が九七年経済危機以前の高度成長時代にGDPの40%の水準にあったのに対し、今では20%に減少していることを指摘。政府投資支出も九七年危機前にはGDPの10%を占めていたのが、今では4~5%に低下している。投資のGDP比が低下する一方で、経済成長を牽引したのが輸出で、物品・サービス輸出のGDP比は九七年危機前の40%から77%まで上昇しており、エカニット氏はこれがタイの経済構造を歪めた問題の根源だと指摘している。


日付 : 2015年07月27日

By : 週刊タイ経済

登録