ユーザー名 パスワード
クイック検索
キーワード

官民連携で高速鉄道 民間部門からの提案受け付け

 プラユット首相は二月一二日、民間との共同投資での高速鉄道網の整備について、関係する諸機関に準備調査を進めるよう指示した。バンコクと主要な観光地を結ぶ高速鉄道の開発を念頭に置いたもので、この日開催された投資委員会(BOI)の本会議で提案した。運輸当局には民間部門が一緒に投資できそうな高速鉄道のルートを調べるよう命じている。

 チャクラモン・パースックワニット工業相は、バンコク~チェンマイ、バンコク~ラヨン、バンコク~ナコンラチャシマ、バンコク~ピッサヌローク、バンコク~フアヒン、バンコク~パタヤなどの可能性のある高速鉄道ルートで民間からの開発提案を募ると述べている。国家社会開発委員会(NESDB)事務局はこれより前、バンコク~パタヤ間の高速鉄道開発を提案している。

 プリディヤトーン・テワクン副首相が統括する官民連携政策委員会は二月一一日に開いた今年2回目の会合で、50億バーツ以上のプロジェクト価値を有する民活事業について、官民連携法の定める原則と手続きに従うよう規定する財務省令の制定を決定している。プロジェクト価値が10~50億バーツの民活事業については、インフラや公共サービスのプロジェクトは同法に従い、国有地の商業開発など、インフラや公共サービスでないものについては、官民連携委員会の監督を受け、報告を求めるものの、同法の原則や手続きの適用を免除することにした。プロジェクト価値が10億バーツに満たない事業は、所轄省の大臣が承認できるようにし、プロジェクトの遅延を回避する。

 官民連携法に基づく民間の共同投資にあたっては、細則として、プロジェクト価値計算の原則と方法について初めて規定した。また民間企業の選定についても既存の規則を修正し、明瞭さと透明性を高めた。このほか官民連携プロジェクトでの民間との契約の必須項目、たとえば官民双方の権限義務、サービス料金や報酬、契約の自動更新の不可、民間側の一方的な条件変更の不可などを規定した。契約の修正は、国民に対するサービス提供の質と政府部門の利益の維持を前提とし、内閣の事前承認を必要とするよう定めた。こうした細則は全部で17の省令や規則から成り、今年二月中にも全て整う見通しで、官民連携によるプロジェクト開発を開始できるようになる。

 官民連携政策委員会は二〇一五~二二年の1兆9000億バーツのインフラ開発プログラムにおける官民連携手法の採用枠を当初計画の3000億バーツから増やすべく、運輸省、国営企業政策委員会事務局、公的債務管理事務局に協議を指示している。

 同委員会は一一日の会議で官民連携戦略計画案を承認している。民間との共同投資が欠かせない事業として、①都市鉄道、②都市内高速道路、③貨物港開発、④高速鉄道開発、⑤通信ネットワーク開発、⑥高速インターネットの6事業を挙げている。このほか国が民間の共同投資を促進すべき事業として①貨物ターミナル、②都市間高速道路、③共通チケット管理運営、④空港内事業運営とスペース管理、⑤水質向上・管理、⑥灌漑設備開発と管理、⑦ゴミ処理、⑧国の教育施設開発、⑨科学技術・イノベーション・インフラ開発、⑩公衆衛生インフラ開発、⑪医薬・医療機器管理、⑫国の資産を使った大型会議場開発を挙げている。

 プラユット首相は二月一〇日、訪問先の日本で、高速鉄道網の開発について、貿易や投資に資するもので、国民の生活水準の改善や低所得層にも役立つとの見方を示している。鉄道路線に沿った地域開発、駅周辺の商業開発も期待できる。首相は今回の訪日で、鉄道プロジェクトの協力に関するタイ日運輸当局の合意覚書署名に立ち会っている。両国運輸当局は、ミャンマーのダウェー経済特別区のタイ側の玄関になるカンチャナブリ県プナムローンからバンコク、チャチュンサオ経由でサケーオ県のカンボジア国境のアランヤプラテートを結ぶ鉄道新線の調査研究を共同で行なうことに合意している。首相は一〇日、東京から大阪まで新幹線で移動した。日本の高速鉄道システムを高く評価しており、タイの鉄道開発に日本の経験や技術を生かしたい考えを示している。首相は新幹線のような高速鉄道は、タイの鉄道開発における将来計画であり、日本の支援次第だと述べている。

 BOIは新投資奨励戦略で、官民連携プロジェクトに対する投資優遇を規定している。政府は高速鉄道の開発提案を民間から広く募り、BOIを通じて税制・非税制分野の優遇を提供するほか、土地収用でも支援する考え。格安航空とあまり競合せず、観光客の利用が見込まれる有力なルートはバンコク~パタヤとバンコク~フアヒン。首相はタイ国鉄の所有地を提供することも可能だとしている。ただし高速運行のためには直線的なルートが必要で、土地の収用や立ち退きを迫られる者への補償も必要になってくるとしている。

 チャクラモン工業相は、高速鉄道構想が政府の運輸インフラ開発の7年計画の一部を成すものではなく、このプロジェクトに国が資金を出すことは難しく、民間部門にどの程度の関心と反応があるかにかかっているとしている。土地収用も含めた政府による鉄道インフラの投資は、在来線の複線化などが優先されるとしている。


日付 : 2015年02月23日

By : 週刊タイ経済

登録