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2014年の経済成長率 第4四半期は2・3%増 通年の成長率は0・7%増にとどまる

 国家経済社会開発委員会(NESDB)事務局が二月一六日に発表した最新GDP統計によると、二〇一四年第4四半期(一〇~一二月期)のタイ経済の成長率は2・3%増となった。季節調整済みの前四半期比では1・7%増。二〇一四年通年では0・7%増にとどまった。家計消費支出は0・3%増、総固定資本形成は2・8%減で、一般インフレ率は1・9%増、経常収支はGDP比3・8%の黒字だった。(22~24面にNESDBのGDPリポート掲載)

 昨年第4四半期の経済成長率は予想されたように加速したものの、成長率は政府の思い描いていた水準を下回り、通年の経済成長率は1%増に届かなかった。NESDB事務局は昨年一一月時点で、通年の成長率を1・0%増と予測していた。経済成長率は一三年の2・9%増を大幅に下回り、ASEAN地域では最も低い成長率となっている。

 アーコム・トゥームピタヤーパイシットNESDB事務局長は、民間消費、民間投資、財政支出の拡大のおかげで、最終四半期に回復傾向がはっきりとしてきたと述べている。最終四半期の成長率は、第1四半期の0・5%減、第2四半期の0・4%増、第3四半期の0・6%増に比べて顕著に上向いている。支出面では民間消費と民間投資、輸出、政府消費支出が支援要因となった。生産面では、ほぼすべての生産セクターが上向いた。特に製造業、建設業、ホテル・レストラン業は収縮からプラス成長に転じた。また卸小売業と不動産業の成長は、季節調整済みの前四半期比では1・7%増と、前の四半期の1・2%増から加速した。

 第4四半期に家計消費支出は1・9%増となり、第3四半期の2・2%増に引き続き順調に拡大した。消費者の景気全般に対する信頼感は改善し、69・6ポイントと、年初からの3・四半期のそれぞれ順に60・0ポイント、61・2ポイント、69・3ポイントから上昇した。自動車販売台数は収縮幅が縮小した。耐久財への支出は、乗用車販売台数が16・3%減と第3四半期の45・8%減に比べて収縮幅が縮小したことにともない、収縮幅が縮小した。一方でその他の財への支出の伸びは加速した。電力消費量、消費財輸入、ソーダ・飲料水販売量はそれぞれ順に5・5%増、4・4%増、18・9%増となり、第3四半期から上向いた。一四年通年の家計消費支出は0・3%増だった。

 総固定資本形成(投資)は3・2%増で、第3四半期の2・9%増から上向いた。民間投資は4・1%増となり、第3四半期の3・9%増から加速した。建設投資がプラス成長に転じたことが支援要因となった。一方、設備投資はわずかに減速した。設備投資は4・7%増となり、第3四半期の6・4%増から鈍化した。資本財の輸入額は3・5%減となった。建設投資は2・4%増で、第3四半期の3・6%減に比べて上向いた。自治市区域の建設許可面積と鉄鋼製品の販売数量がそれぞれ18・3%増、6・9%増となり、これより前の2・四半期の減少からプラス成長に転じた。このほかに新規の投資も大幅に改善している。投資委員会(BOI)への投資奨励申請額はこの四半期に1兆6010億バーツで、329・2%増となり、第3四半期の84・0%増から大幅に加速した。投資奨励申請額はBOI事務局が設置されて以降で最高額となるもので、二〇一四年一二月三一日に既存の投資奨励政策が満了することを受け、投資家が一二月に駆け込み申請を行なったことが理由となっている。また投資奨励の認可も6・四半期ぶりに件数と金額の双方でプラス成長に転じた。認可件数と合計投資額はそれぞれ9・4%増、31・3%増となり、第3四半期の5・8%減、29・9%減から顕著に上向いた。

 政府部門の投資は0・3%減となった。国営企業の投資が8・0%減となったためで、政府投資は9・4%増となった。政府投資は、建設投資と設備投資の双方で改善した。二〇一四年通年の投資は2・8%減で、政府投資が6・1%減、民間投資が1・9%減となった。

 第4四半期の物品輸出は567億6300万ドル、前年同期比1・5%増となった。前の四半期の1・7%減から上向いた。貿易相手国、特に米国経済の好転にともない拡大に転じた。輸出額全体の88・7%を占めた工業製品の輸出が加速し、3・1%増となったことによる。しかし農産物と金地金の輸出はそれぞれ8・5%減、12・6%減となった。このため輸出全体の伸びは緩やかなものにとどまっている。輸出数量の伸びは2・7%増となったが、輸出価格は1・1%下落した。農産物価格の下落による。輸出額が増加したのはコメ、電化製品、エレクトロニクス製品、自動車、機械・機器などで、輸出額が減少したのはタピオカ、天然ゴム、ゴム製品、エビ・カニ缶詰・調製品など。金地金を除いた輸出額は1・7%増。またバーツ建てで見た輸出額は4・7%増だった。二〇一四年通年の輸出額は2247億9200万ドルで、前年比0・3%減。二〇一三年は同0・2%減だった。輸出数量は0・7%増加したが、輸出価格は1・0%下落した。バーツ建てで見ると輸出額は5・4%増加した。二〇一三年は1・3%減だった。

 二〇一四年第4四半期の主力市場向けの輸出は米国、EU(15)、ASEAN(9)向けが増加したが、日本と中国向けは減少した。米国向け輸出は7・2%増で、前の四半期の3・4%増から加速した。米国経済の回復に一致した動き。一方、EU向けの輸出は1・7%増で、前の四半期の2・0%増から若干減速した。ASEAN向け輸出は5・2%増で、前の四半期の1・1%増から加速した。一方、オーストラリア向け輸出は6・四半期ぶりにプラス成長となり、14・6%増と前の四半期の14・4%減から上向いた。自動車・同部品輸出の拡大が寄与している。ただし日本、中国市場向けの輸出はそれぞれ0・6%、15・3%減少した。

 第4四半期の製造業の成長率は0・7%増となり、第3四半期の0・7%減から上向き、6・四半期連続での収縮から初めてプラス成長に転じた。支援要因は海外の需要と家計支出の回復で、この四半期の工業製品の輸出額は3・1%増となった。生産が増加した工業製品は衣料、化学品、電化製品など、収縮幅が縮小した工業は自動車、石油化学、食品・飲料、繊維など。設備稼働率は平均で60・1%と前の四半期に近似したものとなった。二〇一四年通年の製造業の成長率は1・1%減、設備稼働率は平均で60・5%だった。

 第4四半期の農林水産業の成長率は1・6%減で、第3四半期の1・6%増から収縮に転じた。天然ゴム、パーム椰子、果物の生産が減少したためで、天候不順、特に南部での豪雨、年央の日照りが原因。また価格が低水準にとどまっていることも響いた。ただし年度米、キャッサバ、サトウキビ、畜産品、水産品の生産は増加した。水産品は早期死亡症候群問題からのエビ生産の回復が寄与している。一方で、農産物価格は下落したため、農業所得は13・0%減となった。二〇一四年通年の農林水産業の成長率は1・1%増。農産物価格が平均で6・2%下落し、農業所得は5・3%減となった。

 建設業は6・四半期ぶりに成長し、3・7%増と、第3四半期の3・7%減から上向いた。官民双方の建設が拡大した。二〇一四年通年の建設業の成長率は3・8%増。

 ホテル・レストラン業の成長率は3・6%増となり、前の四半期の4・6%減から顕著に上向いた。それまでの3・四半期連続での収縮からプラス成長に転じた。ホテル客室稼働率は64・2%で前年同期に近似するものとなった。二〇一四年通年のホテル・レストラン業の成長率は2・1%減だった。


日付 : 2015年02月23日

By : 週刊タイ経済

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