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プラユット首相が二月に日本訪問 鉄道開発協力で3路線を提示へ

 プラチン・チャントーン運輸相は一月一三日、鉄道新線開発プロジェクトで、プラユット首相が日本政府に対し3路線の開発計画への投資参加を提案することを明らかにした。首相は二月八~一〇日に日本を公式訪問する。安倍首相との首脳会談では鉄道プロジェクトにおける協力が主要議題の一つになると見られている。

 プラチン運輸相は、標準軌による複線鉄道新線について、日本政府には3つのルートを提示するとしている。1つはミャンマー国境のターク県メーソートからピッサヌローク、コンケンを経てラオス国境のムクダハンまでの770㎞(東西回廊路線)。2番目のルートはカンチャナブリ県のミャンマー国境のバーンプナムローンからバンコク経由でラヨン県までの339㎞(南部回廊路線)。バーンプナムローンは、タイがミャンマー政府と共同で開発するダウェーと鉄道や道路で結ばれることになっており、ミャンマーのダウェー経済特別区とタイ東部の工業地帯を結ぶルートになる。3番目のルートはバンコクとチェンマイを結ぶ653㎞(北部線)。

 タイ政府はこれら3つのルートから関心のある路線を日本側に選んでもらうことにしている。運輸相は、日本が選ぶとすれば、バンコク~チェンマイ間になるのではないかと語っている。両国首脳が合意すれば、次のステップとして政府間ベースでの協力に関する合意覚書に調印することになると説明している。その後、ルートと投資方法などの詳細を調査するための合同作業部会が設置される。

 佐藤重和大使を含む日本政府関係者は一三日、運輸省にプラチン運輸相を訪ね、鉄道プロジェクトについて意見を交換している。昨年の段階で日本政府と運輸省の担当者による協議は2回にわたって行なわれていたが、日本の安倍政権が下院を解散したことで協議は一時中断されていた。

 プラユット首相の訪日団にはアーコム・トゥームピタヤーパイシット運輸副大臣が加わる。プラチン運輸相によれば、3ルートの鉄道新線の建設は、昨年七月に国家平和秩序維持団(NCPO)がまとめた鉄道輸送システム開発基本計画の一部を成すもの。ノンカイ~ナコンラチャシマ~ゲンコイ~マプタプットの734㎞とバンコク~ゲンコイの133㎞は、すでに中国政府との共同開発が決定済み。運輸省は中国側と作業部会を設置して準備調査、ルート設計ならびに土地収用について協議していく方針。一月一三、一四日にバンコクで初会合を開き、二月五~七日には第2回会合、二月二五~二七日には第3回会合が開催されることになっている。初会合では、土地の測量から建設計画、プロジェクト管理、工程表、土木、鉄道建設技術、運行にあたっての人材開発まで幅広い課題について協議した。三月一日には設計されたルートの視察も予定されている。レールシステムや鉄道車両は中国の技術を採用する。

 運輸相によれば、鉄道新線プロジェクトには韓国政府も関心を示しているが、タイ政府側はまだ具体的なルートを提示していない。鉄道新線を建設する権利を一国のみに与える方針は全く持たず、関心を示しているどの国とも協力する用意ができていることを付け加えている。

 プラチン運輸相が一五日に発表した計画によれば、タイ・中国共同開発路線は、4つのセクションに分けて建設を進める方針で、最初の2つのセクションは二〇一七年、残り2つのセクションは二〇一八年の開通を目指す。最初の2つのセクションは、バンコク~ゲンコイの133㎞とゲンコイ~マプタプットの246・5㎞。今年九月には着工し、二〇一七年一二月の開通を目指す。またゲンコイ~ナコンラチャシマ区間の138・5㎞とナコンラチャシマ~ノンカイ区間の355㎞の残り2つのセクションは今年一二月にも着工し、二〇一八年三月の開通を目指す。

 合計で873㎞に達する全線の総工費は3500億バーツと見積もられている。今後、建設予定地の測量を行なう過程で、より多くの土地が必要になる場合には、土地収用費が増える可能性もある。運輸相は、様々な分野で経験を有するタイの企業12~15社、中国企業5社がプロジェクトへの参加を求めていることを明らかにしている。

 ソイティップ・トライスート運輸省次官は一四日、日本がタイの期間8年の運輸インフラ開発計画の詳細情報を求めていることを明らかにしている。同次官によれば、日本の国土交通省の担当者がこのほどタイを訪問し、一四日にタイ運輸省の担当者と会合を持っている。日本側は、鉄道新線プロジェクトだけでなく、バンコク首都圏の電車プロジェクト、在来線の複線化プロジェクトへの投資にも関心を示した。

 現在、開発が進む電車パープルラインの鉄道システムとメンテナンスは丸紅と東芝が出資する共同事業体が受注しており、ソイティップ次官は、今年九月までの運行開始に間に合わせるため、車両など設備の納入を急ぐよう日本側に要請したことを明らかにしている。鉄道システムは車両、信号・運行監視設備、変電設備、通信設備などのシステム一式を納入するもので、納入する鉄道車両63両は東日本旅客鉄道グループの総合車両製作所が製造する。

 バンコク都内のバンスーとノンタブリ県バンヤイを結ぶ全長約23㎞の電車パープルラインは、チョーガーンチャン社(CK)が建設工事を受注しており、電車運行はCKのグループ会社で、電車ブルーライン(地下鉄MRT)を運行するバンコク・メトロ社(BMCL)が受注している。鉄道システムはCK、メンテナンス事業はBMCLとの契約。メンテナンス事業は東芝、丸紅、JR東日本などが共同で事業会社を設立し、軌道・駅設備を含めた鉄道施設一式のメンテナンス事業を10年間請け負うことになっている。

 一四日の実務者協議では、日本側は鉄道貨物輸送におけるITによる管理システムの供給を提案している。輸送効率の最大化で時間と費用の節約につながるという。タイ国鉄が関心を示しており、調査研究の合同パネルの設置で合意した。


日付 : 2015年01月19日

By : 週刊タイ経済

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