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エネルギー省が15年度の基本計画 資源探査入札/電源開発計画/価格構造調整

 ナロンチャイ・アカラセラニー・エネルギー相が二〇一五年度の同省の基本計画を明らかにした。資源探査・採掘の21回目の事業権入札を実施するほか、新たな電源開発計画(PDP)を策定するほか、エネルギー価格を実際のコストをより反映するものに改める価格構造調整を進める考え。

 資源探査の入札は二〇一一年以来、環境団体の抗議などが理由で延期されていた。ナロンチャイ大臣は、タイの可採石油・ガス埋蔵量は近い将来に危険水準まで下がると警告。新たな油田・ガス田の探査が待ったなしになっていることを説明している。前回の資源探査の入札は二〇〇七年に実施された。28鉱区のうち、可採埋蔵量が確認できたのはわずか5鉱区で、これら鉱区はライセンスが交付されている。鉱物燃料局によれば、21番目のラウンドでは29の鉱区が対象。東北地方が17鉱区で、残りは中部地方。

 タイ石油研究所のシリ・ヂラポンパン所長によれば、現状ではタイ国内の石油・ガス埋蔵量は二〇二一年に枯渇し、二〇三〇年時点ではエネルギー消費の85%まで輸入に頼ることを余儀なくされる。同研究所は、既存の電源開発計画の下で、タイが付加的な石油・ガス資源を見つけることができず、電力生産で天然ガスへの依存を続けた場合、電力料金は現在の1キロワット時あたり3・90バーツから、二〇二一年には5・50バーツへと41%値上がりすると試算している。液化天然ガス(LNG)の輸入コストはタイ湾で産出される天然ガスの2倍はするため。国内の天然ガスが枯渇して、輸入LNGで代替することになれば、さらに7、8か所のLNGターミナルも必要になってくる。

 シリ所長は、最近の米国の地質学調査により東北地方のコラート高原には5兆立方フィートの天然ガスが埋蔵している可能性があることを明らかにしている。ただしこの報告は第一次答申で、探査によってデータを確認する必要がある。一方、エネルギー省は二〇二二年までに満了する既存の探査・採掘事業権については、資産評価のためにコンサルタントを任用することにしている。

 同省はエネルギーの安定供給を保障するため、第21次の資源探査・採掘入札を実施するほか、ミャンマー、カンボジアとのエネルギー分野の協力強化で協議していく考え。プラユット首相は九日にミャンマーを公式訪問し、テインセイン大統領との間で、電力、資源分野での両国の協力について話し合った。カンボジアとの間では、領海主張が重複する海洋石油ガス鉱区の共同開発の協議を再開したい考えで、カンボジア側に両国合同の作業部会の設置を提案していく。ナロンチャイ大臣は、資源開発では両国領海主張エリアを最優先したいとしている。電力分野では、ラオスからの輸入のほか、ミャンマーやカンボジアからの輸入も検討している。アーリーポン・プーチャウム・エネルギー省次官は、ミャンマーとカンボジアからの電力輸入を計画していることを明らかにしており、来年三月にも両国との間で合意覚書を交わす予定。

 刷新するPDP(二〇一五~二〇三六年)は、相対的に生産コストが低く、クリーン技術が発達し、環境負荷が減少している石炭火力発電の比重を増やす考え。タイ発電公団(EGAT)のクラビー発電所は現政権の任期中の来年にも着工する運びとなっている。ナロンチャイ大臣は、クリーンな石炭テクノロジーと呼ばれるものについても環境保護団体などは反対すると予想、クラビー石炭火力発電所は試金石になると見ている。同大臣は、発電燃料の天然ガスへの過度の依存を引き下げる上で、クリーンな石炭火力発電は一つの解決策だと説明している。

 エネルギー政策企画事務局のチャワリット・ピチャライ事務局長によれば、PDPの公聴会はすでにバンコク、コンケン、チェンマイ、スラタニの各地で開催済み。旧PDPでは二〇三〇年時点の電力需要を7万1000メガワットと見積もり、その内訳を天然ガス58%、石炭19%、代替エネルギー18%、原子力5%としていた。新版のPDPではこの構成比率を改定し、石炭と近隣国からの電力輸入の比率を増やすことになる。原子力の比率は据え置く。現在の構成比率は、天然ガス65%、石炭21%、輸入7%、水力4%、再生可能エネルギー2%、重油1%となっている。チャワリット事務局長は、石炭の黒い色は汚く、汚染が激しいことを意味するものではなく、また原子力は現在非常に安全なテクノロジーだと述べている。石炭がより安価で豊富な資源であるため、先進国の多くは40%超を石炭に依存していると述べている。

 一方、エネルギー政策企画事務局は、エネルギー価格の構造調整を検討するため、一〇月二二日に国家エネルギー政策委員会の会議が開かれることを明らかにしている。ナロンチャイ大臣は一〇月三日のエネルギー省発足12周年記念式典で同省高官を前に挨拶し、基本計画を明らかにするとともに、歴代政府が続けてきたエネルギー補助金の後片付けをすると述べている。すべての燃料ユーザーを対等の地位に置くことを約束している。

 運輸セクター向けの液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)の小売価格を実際のコストに近づけるため、徐々に引き上げていくことにしている。軍政は家計向けのLPG小売価格の段階的引き上げ措置を凍結しているが、実勢価格を反映するよう調整を続ける考え。ただし目標価格は、最近のLPGの国際相場の下落に沿って、1㎏あたり24・82バーツに引き下げることを検討している。LPGの価格は今年初め時点で1トンあたり800~900ドルの高値圏にあったが、現在は747ドルまで下げている。エネルギー政策管理委員会は、LPGの価格を1㎏あたり0・62バーツ、CNGは同1・00バーツ引き上げることを九月三〇日に決定している。ナロンチャイ・エネルギー相はまた、軽油ユーザーを厚遇するのはガソリン・ユーザーに不公平だと指摘。軽油価格を1リットルあたり30バーツ未満に抑制する政策を撤回するとしている。ただし自動車ユーザーやガスのユーザーに調整期間を与える必要があるとも述べ、価格構造調整は段階的に進めるとしている。

 代替エネルギー開発は引き続き支援していく方針だが、従来は立地を十分考慮せずに免許を交付してきたため、電力の買い上げで障害が生じることがあった。このため送電線のある場所に限定することで代替エネルギー開発の効率を引き上げる。代替エネルギー開発ではゴミ発電を促進する方針で、年内に基本計画をとりまとめる。太陽光発電は、2000メガワットの達成目標の実現に向け、障害となっている法規の改正を進め、電力の買取を促進する。新たなエネルギー保全計画も今年中にとりまとめる。


日付 : 2014年10月13日

By : 週刊タイ経済

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