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タイ国日系企業景気動向調査 今年下半期は上向く見通し

 バンコク日本人商工会議所(JCC)経済調査会が七月二九日に発表した「2014年上期タイ国日系企業景気動向調査」によれば、日系企業の二〇一三年下半期の業況感は、消費の減速などを背景に一三年上半期に比べて悪化に転じている。二〇一四年上半期の業況感は悪化幅が拡大するものの、下半期には再び上向く見通しとなっている。

 二〇一三年下半期(七~一二月)の業況感は、二〇一三年上半期(一~六月)に比べ、消費の減速などを背景に悪化に転じた。業況が上向いたとの回答は35%と前の期(46%)に比べ11ポイント減少した。一方、悪化したとの回答は37%と前期(25%)に比べ12ポイント増加した。この結果、「上向いた」から「悪化した」を差し引いたDI(景気動向指数)は、マイナス2と、前の期(プラス21)に比べて23ポイント低下した。業種別DIの動きをみると、製造業は、鉄鋼・非鉄、輸送用機械などが大幅に減少したことを受け、マイナス7と、前期(プラス16)に比べて23ポイント低下した。非製造業もプラス4と、前の期(プラス29)に比べて25ポイント低下しており、小売を除く全ての業種で低下した。

 二〇一四年上半期(一~六月)の見通しに関しては、業況が上向いているとの回答は26%と、前の期から9ポイント減少した。また、悪化しているとの回答は51%と前の期に比べて14ポイント増加した。この結果、DIはマイナス25となり、前の期のマイナス2に比べて23ポイント低下する見通しとなった。業種別の動きをみると、製造業はマイナス22で、電気・電子機械を除くすべての業種で低下し、前の期に比べて15ポイント低下した。非製造業はマイナス28で、建設・土木をはじめとするすべての業種において低下し、前の期に比べ32ポイント低下する見通しとなった。

 二〇一四年下半期(七~一二月)の見通しに関しては、業況が上向くとの回答は34%と前の期から8ポイント増加した。一方、悪化するとの回答は31%と前の期から20ポイント減少した。この結果、DIは+3と前の期に比べ28ポイント上昇する見通しとなっている。業種別にみると、製造業はプラス2となり、輸送用機械をはじめとする全ての業種で上昇し、前の期から24ポイント上昇する見通しとなっている。非製造業は、プラス5となり、金融・保険・証券をはじめとする全ての業種で上昇し、前の期から33ポイント上昇する見通しとなっている。

 二〇一三年度の総売上実績額は、増加する企業が52%にとどまり、前年度に比べて21ポイント減少した。20%超増加する企業は17%で前年度に比べ17ポイント減少した。二〇一四年度の総売上見込み額は、増加する企業が49%で、前年度から3ポイント減少した。20%超増加を見込む企業は11%で、前年度から6ポイント減少した。

 二〇一三年度の税前損益の黒字を見込む企業は全体の83%だった。また税前利益の利益拡大(赤字縮小、赤字から収支均衡を含む)を見込む企業は45%で、利益縮小を見込む企業は40%となった。二〇一四年度については、税前損益の黒字を見込む企業は78%。税前利益の利益拡大を見込む企業は29%、利益縮小を見込む企業は51%となった。

 二〇一四年度の設備投資予定額(製造業)は、二〇一三年度に比べ11・4%減少する見込み。投資増と回答した企業は36%で、投資減と回答した企業は39%だった。

 輸出動向は、前年同期比で増加するとの回答が二〇一四年上半期で39%、下半期で43%となり、いずれも減少するを上回った。一四年通期では増加するが46%となり、減少するを31ポイント上回った。今後の有望輸出市場(複数回答)では、インドネシアが52%と最も多く、次いでベトナム(38%)、インド(31%)、ミャンマー(28%)、日本(20%)の順となった。

 業務計画における設定為替レート(バーツ/ドル)は、1ドル=32・0~32・5バーツとする回答が全体の36・5%と最も多かった。次いで1ドル=31・0~31・5バーツとする回答が19・5%となった。中央値は1ドル=32・0バーツだった。円/バーツは、1バーツ=3・1~3・2円とする回答が全体の37・7%と最も多かった。次いで1バーツ=3・2~3・3円とする回答が36・1%となった。中央値は1バーツ=3・1円だった。

 二〇一三年度の部品・原材料の調達先比率(回答企業の単純平均)は、ASEAN域内が63・3%となり、うちタイ国内は55・6%だった。二〇一四年度は、一三年度と比べて、タイ国内、中国からの調達割合がわずかに増加し、ASEAN域内(タイ以外)、日本からの調達割合がわずかに減少する見込みとなっている。

 経営上の問題点(複数回答)は、他社との競争激化が69%と最も多かった。以下、総人件費の上昇(48%)、マネージャーの人材不足(48%)が続く。製造業では、原材料価格の上昇(32%)、非製造業では従業員のジョブホッピング(33%)も多かった。タイ政府への要望事項(複数回答)は、政情の安定・安全の確保が93%と最も多かった。以下、バンコク首都圏のインフラ整備(40%)、関税・通関制度や運用の改善(39%)、洪水対策の着実な実施(27%)と続く。製造業では、教育・人材開発向上(27%)、非製造業では外国人事業法の規制緩和(34%)も多かった。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所の井内摂男所長は、七月二九日の記者発表で、輸出がグローバル経済の動向に沿って改善しそうで、内需もタイ経済を前進させる主要なファクターになるかもしれないと述べている。三〇日付けで帰任した井内氏は、国家平和秩序維持団(NCPO)が、改革を計画通りに前進させることができるならば、経済成長を駆り立てることが期待できるとしている。また観光業がGDPの約10%を占めていることから、下半期に観光業が復旧すれば、もう一つの景気づけになるとしている。

 井内氏は、景況感が悪化しているにもかかわらず、アンケート調査に応じた日系企業の36%が設備投資を増やすとしていることを強調。多くの日系企業がタイに研究開発センターを設立していることも紹介している。


日付 : 2014年08月18日

By : 週刊タイ経済

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