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サムットプラカンのゴミ捨て場火災 バンコク東部含む広大な地域に煙害

 サムットプラカン県ムアン郡プレクサー区のゴミ捨て場で三月一六日に発生した火災は、陸空からの消火活動にもかかわらず、先週を通じて燃え続け、周辺地域の煙害と健康被害が問題になっている。近隣コミュニティの約200人の住民は避難を余儀なくされている。保健省は一八日、現場から半径500メートルを立ち入り禁止とするレッドゾーンに指定し、半径1キロメートルをイエローゾーンに指定した。レッドゾーンではすべての居住者に避難を呼びかけた。保健当局は現場から半径200メートルの住民や消火活動に従事した消防士、ボランティアなどは、国立サムットプラカン病院で血液、尿検査や心肺機能の検査を受けなければならないとしている。

 一六日には火災発生の報を受け、20台以上の消防車が出動して消火作業に当たったが、ゴミ捨て場は70ライ以上の広さがあり、消火作業が難航した。カニット・イアムラホン同県知事は、煙害が拡大するなか、現場周辺を災害ゾーンに宣言し、救助活動に入っている。災害ゾーン宣言は、大気中の二酸化硫黄が有害なレベルに達したことが理由。近隣のコミュニティは厚い煙に飲まれている。幸い、風向きの関係から、現場の南に位置するバンプー工業団地には激しい煙害が及んでいない。同工業団地周辺は密集居住区でもあり、風向きが変われば、多くの人が影響を受けることになるため、当局は警戒を強めている。二〇日には空軍の輸送機を使った空からの消火作戦も実行されている。火災発生から一九日までは空からの消火活動は天然資源・環境省の2台のヘリコプターを使ったものにとどまり、1回の出動で散水可能な面積はせいぜい1ライにとどまっていた。空軍のBT・67型輸送機は1万2000リットルの水を散布可能。空軍は効果が証明されれば、消火まで作戦を続行するとしている。災害予防軽減局によれば、二〇日現在、燃え続けているのはおよそ20ライで、状況はかなり改善されてきている。

 汚染管理局によれば、火災現場から半径300メートルの地域では大気中の二酸化硫黄のレベルは火災発生の翌日でも8~10ppmに達している。火災現場から1キロメートル離れた場所でも二酸化硫黄濃度は2~4ppmを記録している。大気中の二酸化硫黄濃度の安全基準は0・12ppm未満とされる。大気中の一酸化炭素のレベルも高くなっているが、火災当日に安全標準を超えていない。一酸化炭素のレベルは12ppmで、安全基準は27ppm未満とされる。二〇日時点では二酸化硫黄濃度は低下しており、災害状況は改善に向かっていることが確認されている。

 保健当局は火災現場周辺地域の住民にマスクの着用を呼びかけるとともに、煙を吸引したときの対処方法などを広報している。火災による煙が原因で周辺住民に目や鼻などに軽い痛みを感じるなどの症状が出た。当局によれば火災発生現場から半径1・5キロメートルには少なくとも6か所のコミュニティが存在している。プレクサー区の居住者は区の集会場などに避難し、約200人が一六日の夜を集会場で過ごしている。避難したある住民は、厚い煙と強烈な刺激臭がコミュニティを覆った火災発生当日の午後には危険を感じたと述べている。また煙はバンナー区、サパーンスーン区、ラーカバン区、プラウェート区などバンコク東部にも影響を及ぼしている。都庁はバンナー、プラウェート、プラカノン、クロンサムワー、ブンクムの6区で大気の質を監視し続けている。

 火災現場は不法ゴミ捨て場で、バンプー工業団地に近い。当局は出火原因について調査している段階だが、灼熱の太陽の下、ゴミから発生したメタンガスによる発火が疑われている。このゴミ捨て場は、過去には正規のゴミ埋立地として機能していたが、すでに免許はなくなっており、ゴミが不法に投棄されていた。この火災を受け、ゴミ捨て場にはバンプー工業団地内の工場の有害廃棄物も不法投棄されていたとする情報も飛び交っている。

 しかし工場局による初動調査では、ゴミ捨て場の土壌は酸性/アルカリ性の度合を示す水素イオン濃度指数はほぼ中性となっている。有毒な苛性ソーダや硫酸などの廃棄物が含まれている場合には同指数は際立った値になる。ナッタポン・ナッタソムブン局長は、家庭ゴミ埋立地への産廃の違法投棄を検査することは難しいと述べている。同局長は、家庭ゴミの埋立地は地方自治体の管轄下にあり、産業廃棄物が違法に処理されていないか検査するには地方自治体からの許可が必要。同局の管轄下にないため、苦情申し立てがない限り、検査に入ることは困難。またほとんどのゴミ捨て場のオーナーが地元の有力者でもあるのため、危険をともないがちであることも明かしている。一方で、バンプー工業団地のゴミ焼却炉を経営するSET上場企業のベター・ワールド・グリーン社の幹部は、ほとんどの工場が化学薬品を扱うため、有害廃棄物はかなりの量が出ているはずだと指摘している。

 バンプー警察署は、安全標準を無視し、無許可でゴミ埋め立て事業を営んでいたとして火災現場のゴミ捨て場の経営者を検挙する方針を示している。容疑者は2人で、土地のオーナーではないが、地主から借りて2年にわたって営業していた。ライセンスは取得していたが、昨年終わりに期間が満了しており、更新手続き中だったとしている。一方、プレクサー区の自治体は、法律上必要な環境条件を満たしていないため、自治体が許可したことはないとしているほか、ゴミ埋め立てを違法営業しているとして昨年末、容疑者らを警察に告発していたことを明らかにしている。

 周辺住民の話では、このゴミ捨て場は20年前から使われてきており、これまでも異臭や汚水の問題がたびたび生じてきた。プラサート・ブンチャイスック工業大臣は、県工業事務所からの報告で、無許可営業をしてきたことが明らかになったとして、ゴミ捨て場の経営者を工場法違反容疑で告発する方針を示している。また法務省特別事件捜査局(DSI)も捜査を進めることを明らかにしている。これまでに入手可能な情報からは、大量の有害産業廃棄物が不法投棄されていた可能性があるという。

 保健当局はレッドゾーンには近寄らないよう呼びかけるとともに、イエローゾーンについても妊婦、幼児、高齢者や心臓病などの疾患を抱える人は近寄らないよう広報している。汚染管理局によれば、一八日時点でもゴミ捨て場から1キロメートルの地点で大気中の粒子状物質の濃度は1立米あたり354マイクログラムを検出しており、120マイクログラムの安全基準よりも3倍高くなっている。微粒子は吸引すると肺に沈殿し、発ガン・リスクをもたらす。しかし一九日の段階では、避難勧告を受けた約500人のうち避難した者は200人程度にとどまっている。関係者によれば、家財の安全を心配して避難を拒む者が少なくないという。

 カニット県知事は、一八日、懸命の消火作業の結果、炎の勢いが弱まり、有毒物質を含んだ煙の量も減ってきていると述べている。海軍の飛行機なども動員し、消防車の数を増やして消火活動にあたっており、鎮火間近との認識を示している。

 汚染管理局の報告によれば、全国で発生する家庭ゴミは年間およそ2700万トンで、このうち規則に従って正しく処理されているゴミの量は720万トンに過ぎない。ウィチアン・ジュンジュンルンルーン局長が一九日の記者会見で話したところによれば、昨年に発生したゴミの量は、タイで最も高いビルのバイヨック・タワー2の139棟分に相当する。また有害廃棄物も年間265万トンが発生し、うち204万トンが産業部門、残りが家庭から出ている。


日付 : 2014年03月24日

By : 週刊タイ経済

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