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タイ国内における賃貸工場ニーズの背景

  タイ国で工場を設営する場合、自ら土地を購入して工場建屋を立てる場合と、信用のおける便利なレンタル工場をタイでの仕事の勝手が分かるまで2~3年賃貸する場合(2~3年経過したところで買取りまたは移転を考える)の二通りの方法があります。最初から規模の大きな計画を考える場合以外は、先ずはタイの事情が分かるまでの2~3年は、レンタル工場を借りてスタートされるのが無難です。レンタル料の計算は、保証金(敷金)は賃貸料の3~6カ月分、賃貸料は、1㎡ 150バーツ(約450円)~ 200バーツ(約600円)で、工場建屋の平均は1,000㎡~2,000㎡です。保証金(敷金)は契約満了後に建物の現状復帰にかかった費用を差し引いた額が返却されます。レンタル工場入居は、5~10年で自社工場をもつのと同じだけのコストがかかると言われており、5年程度までの短期の操業や、テスト操業の場合にはレンタル工場が向いています。実際、賃貸工場を利用する顧客は、3年をひとつの目安として契約される場合が多いです。

  また、受注生産形態の企業の場合、技術者の育成ができないと操業が不可能との判断で、レンタル工場を借用し、現地の技術者の育成スピードを速めるケースもあります。タイでは、タイコン(TICON)社が工業団地内のレンタル工場ビジネスを活発に展開しており、その貸し工場利用率のほぼ半分を占めるのが日系企業です。最近はアマタナコン工業団地や304工業団地も、工業団地内のレンタル工場ビジネスに参入しています。

  近年、投資のリスクを考慮した、賃貸工場による操業開始が注目されています。進出企業のニーズに合わせ、契約を交わしてから工場を建設します。その背景として、これまではタイの取引先に対しては出張ベースで対応していたものを、販売会社設立により、地場企業を外注先として活用し、納入先の要請に答えようとする動きがあります。そして、外注先の頂点に立ってそれら協力工場を統轄していくだけの商売ではこの先限界があるとして、ようやく取引先の受注もある程度確保できる見通しが立ったことから製造工場立ち上げに着手するという流れです。しかし、そういった場合でも、中小企業はあくまで慎重であり、最初は賃貸工場でスタートするケースが多い。その後、相次ぐ増産対応で手狭になってから、賃貸工場から、今後の拡張を見据え自前の工場に移るケースが多い。一方、大手企業の場合、自前で工場を建ててしまうと、それが資産になってしまい、事業計画の変更が出た場合に、工場を売却するのは非常に困難だといった状況があります。そういったリスクや手間を減じるために、貸し工場を利用するというのが最近の大手企業の傾向です。

  賃貸工場と中古機械でとりあえずタイ工場をスタートさせ様子を見るというケースもあります。ある日系企業は中国にすでに数カ所に工場を有すものの、将来の中国リスクを考慮して近年タイに工場を立ち上げたところもあります。工場の稼働率はこれからと言う段階であり、日本も含めた全売上高からみたタイ工場のシェアはまだ低いが、共産主義と市場経済との共存により制度疲労が生じるかもしれないというリスクを少しでも避けようとする企業の自己防衛の動きと判断されます。そこに、設備投資を最小限に押さえリスクを極少化し、しかも取引先の要請に答えながら自社の海外戦略を描くという経営手腕が感じられます。

賃貸工場を使用するメリット

  賃貸工場のメリットは、景気の良い時期・国に素早く、低リスクで工場進出ができる点にあります。需要が伸びている中、スピーディーに操業できることで、計画通りにすぐ利益を上げることが可能になります。多くの場合、機械搬入等の運営体制によりますが、最初の打ち合わせ会議から3ヶ月内に工場の全面稼動が可能になります。また、賃貸工場をステップに、少しの投資で回収も早く、次の事業に積極的に展開できるビジネスチャンスを創れます。一方、自前で工場を立ち上げようとすると、完成までに1年半程度の時間がかかってしまいます。現在タイという国は非常に伸びていますが、1年半後にこの経済が変動しているかどうかは誰にもわからないというのが正直なところです。他にも、自前で工場を立ち上げるよりもリスクが少なく、リスクが少ないために広い場所を借りることができます。また、ターゲットとなる市場の変動に柔軟に対応できるというのが主なメリットといえるでしょう。実際、発注量(生産量)の予想が困難なため、生産拡大・縮小に柔軟に対応でき、かつ、初期投資が少なくて済むレンタル工場を利用するようなケースもあります。

  タイは好景気に加え、政治・経済・治安の安定、整備されたインフラ、技術力などが他国より魅力的な場所です。最近ではこのようなタイの環境感が定着し、初めて海外進出を検討するフィジビリティ・スタディにおいて、手軽な賃貸工場に対する問い合わせが増加しています。また、この流れから大小、他業種、さまざまな製造業がタイへ進出検討のため訪れ、今までの「標準賃貸工場」ではない新たな賃貸工場へのご要望に応えることを求められています。例えば、工業団地の中では、総務・経理等の管理のアウトソーシングや中小企業向けの小区画による工場の賃貸等サービスが充実しつつあります。

  「標準賃貸工場」とは、賃貸工場プロバイダーが選定した工業団地の土地に、土地の大きさにあった工場を床耐荷重1~3トン/㎡で用意したものです。工場デザインは賃貸工場プロバイダーそれぞれ違いますが、基本的に平屋建てで1階は玄関、従業員用トイレ、工場エリアになり、2階として玄関上のみに事務室トイレ付きが設けてあります。また、これはスタンドアローンタイプ(土地付き一戸建て)、テラスタイプ(外側共有スペース長屋式)で用意されています。以前は、このような出来合いの標準賃貸工場に仕様が合わない場合、賃貸をあきらめざるを得ない状況がありました。しかし、すでに進出されたメーカーから海外進出を迫られる状況にある、工業技術を下支えするサポーティングインダストリー(素材を加工したり、精密部品機器を製造する産業分野)に属する企業は、それに対応するケースとして、標準賃貸工場用に用意した土地を更地の状態から押さえ、顧客企業の要求仕様を盛り込み建設するという件数が増加し、賃貸工場として準標準的になってきています。例えば、床耐荷重の強化、クレーンの基礎など建物建築と同時進行できるものです。

  タイ国内にすでに顧客をお持ちで、将来は自社工場を開設したいと希望されている中小企業の方々にとっては、集合工場という選択肢もあります。タイ国内の賃貸工場の平均的な床面積は1000㎡ですが、サポーティングインダストリーの分野にある中小企業には広過ぎるため、2006年6月にアマタナコン工業団地内にオープンしたOTA TECHNO PARK(大田区中小企業向け集合工場)のように、中小企業の操業に適した床面積が用意されている物件もあります。床面積が小さい工場は平米単価が高いのが普通ですが、OTA TECHNO PARKのように、廉価なテナント料金(1㎡約600円)が設定されている物件もあります。現在ではご指定の場所が賃貸工場としてメリットがある場所と判断できれば、その土地を購入し、ご要求仕様の賃貸工場を用意する(特注賃貸工場)ケースもあります。ただし、あまり要求の仕様が特有の場合、次の借り手も限られてしまうため長期賃貸を考えていただく必要があります。

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